技能実習生を受入れる際、「技能実習生の給与設定はどうすればよいか」とご相談いただくことがあります。
給与は受入企業さまにとって、そして技能実習生にとっても大切な問題ですので、事前に理解しておくことが必要です。
今回は
- ・技能実習生の給与相場は?
- ・技能実習生の給与はどう決める?
- ・最低賃金で雇用できるのか
- ・技能実習生の適切な賃金設定
これらについて解説していきます。
技能実習生の賃金設定がよくわかる
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【企業が理解を高めるべき賃金設定ガイド】

- この資料でわかること
- 技能実習生の労働条件
- 賃金概要について
- 割増賃金について
- 賃金設定について
技能実習生の給与相場は?
厚生労働省が発表した「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」によると、外国人労働者の給与は以下の通りです。
在留資格区分 | 賃金 |
専門的・記述的分野(特定技能を除く) | 32万6,500円 |
特定技能 | 19万4,900円 |
身分に基づくもの | 27万600円 |
技能実習 | 16万4,100円 |
その他 | 18万9,600円 |
外国人労働者平均 | 22万8,100円 |
技能実習生の平均給与は16万4,100円となっています。
技能実習制度は就労目的の制度ではありませんが、外国人労働者平均の22万8,100円と比べると、6万円以上低くなっています。
ちなみに同資料での、同年代の日本人(25歳~29歳)の平均給与22万4,100円と比較しても6万円の差があります。
また厚生労働省発表の「令和2年度
労働者派遣事業報告書の集計結果」では、派遣労働者の平均給与が31万1,800円(8時間換算15,590円、20日労働で計算)となっており、これは全業種の平均なので一概にはいえませんが、技能実習生の平均給与は日本人と比較しても大きな開きがあるといえるでしょう。
技能実習生の給与はどう決める?
技能実習生の給与は受入企業さまで自由に決められるわけではなく、制度に沿って設定する必要があります。
最低賃金を守る
最低賃金には、都道府県別に定められている地域別最低賃金と、産業ごとに制定されている特定(産業別)最低賃金があります。
技能実習生の給与設定をする時には、これらの最低賃金を上回らなければなりません。
仮に、技能実習生の同意のもと最低賃金以下で契約したとしても、その額しか払わなかった場合は最低賃金法違反となります。
同一労働同一賃金を遵守
同一労働同一賃金とは、同一企業の中で同等の業務を行う正規雇用者と非正規雇用者の待遇差をなくすために、厚生労働省が策定したものです。
技能実習生は非正規雇用者の中の有期雇用労働者に該当しますので、同等の業務を行う日本人と比較して、同レベルの給与が必要となります。
割増賃金を支払う
時間外労働や休日出勤に関しても、日本人と同様に割増賃金を支払わなければなりません。
特に、2023年3月で中小企業への割増賃金の猶予期間が終わりますのでしっかり確認しましょう。
- 60時間を超える残業時間割増賃金の取扱い
- 1日8時間、1週40時間の法定労働時間で働いているで80時間の時間外労働があった場合には、60時間分の時間外労働に関しては割増賃金率25%以上、60時間を超えた残りの20時間分に関しては割増賃金率50%以上が適用となります。
- 深夜・休日労働の取扱い
- 月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯におこなった場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。 月60時間の時間外労働時間の算定には法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。月60時間を超える法定外休日に行った労働時間に対しては、50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
最低賃金で雇用できるのか ~3つの危険を誘発!?
最低賃金法第一条では以下のようにうたわれています。
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
法律上は、最低賃金での雇用は問題ありません。
とはいえ、現実問題として最低賃金さえ支払われていれば十分というわけでもありません。
技能実習生も同様で、仮に最低賃金で契約を交わしていたとしても、それがあまりに長く続くとさまざまな弊害が出る恐れがあります。
技能実習生の失踪を誘発
最も大きな問題は、最低賃金が続くと失踪を誘発するということです。
SNSを通じて他県の技能実習生と給与状況を比較することがあり、給与の差が大きいと労働意欲に大きく影響します。
地域による格差であっても、なかなか理解できない技能実習生もいます。
自分の給与が最低賃金のまま長く続いており、他の実習生の給与との格差があまりに大きい場合、失踪につながるおそれがあります。
好条件の他社への転職を誘発
技能実習生は、技術を修得することを目的とした制度であることから転職は認められていません。
しかし特定技能制度を活用し、技能実習を終えた後に特定技能として転職していくケースがあります。
3年間、もしくは5年間育て上げた技能実習生は、特定技能として十分戦力として活躍が期待できるはずです。
しかし最低賃金が続くようでは、特定技能のビザを取得した途端、好条件の他社への転職は免れないでしょう。
最低賃金法・労働基準法違反を誘発
最低賃金は、毎年のようにアップしていっています。
最低賃金での雇用を続けていた場合、最低賃金が上がっていたことに気付かず最低賃金法や労働基準法違反を犯す危険があります。
違反した場合、罰金や、悪質な場合は受入れ停止の可能性もあります。
技能実習生の適切な給与設定
最低賃金での雇用には大きな弊害があります。
といっても「適切な給与設定」をすることは簡単なことではありません。
3年間、または5年間という期間の限られた中で、お互いが満足する水準を保つためにはどうしたらよいでしょうか。
ポイントは2つです。
ひとつは昇給の活用です。
限られた期間で効果的に昇給をおこなうことで、実習へのモチベーションをあげることができます。
もうひとつは賞与の活用です。
法律では、技能実習生への賞与は定められていません。
しかし、賞与を効果的に活用することで、技能実習生のモチベーションや実習への効果が大きく向上します。
ポイントは、単に支給するのではなく効果的に賞与を渡すことです。
賞与・昇給をうまく活用し、技能実習を成功させましょう。