技能実習制度は「日本の技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的」として運用されてきました。
※関連情報:技能実習制度とは?
1993年に創設されてから様々な改善が加えられ、2017年には新しい制度として生まれ変わりましたが、この度改めて「育成就労」という新しい制度として再度生まれ変わろうとしています。
技能実習と育成就労の2つの制度を比較して、その違いをみてみましょう。
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「技能実習」と「育成就労」何が変わる?


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追記:「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」成立
2024年6月14日、参議院において「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」が可決成立しました。
ここで改めて、技能実習制度と育成就労制度の違いを比較してみましょう。
制度の違い | 技能実習 | 育成就労 |
制度の目的 |
◇国際貢献 ◇人材育成 |
◆特定技能1号に移行できる人材の育成 ◆産業分野での人材確保 |
期間 | ◇最大5年 | ◆最大3年※相当の理由(試験に落ちる等)があれば最大1年延長可 |
転籍 | ◇不可 |
◆条件を満たせば可能 ①やむを得ない事情がある場合 ②・同一業種であり ・分野で定められた期間就労しており ・技能、日本語の水準が満たされており ・転籍先が適正な場合 |
関係機関 | ◇監理団体 ◇外国人技能実習機構 |
◆監理支援機関 ◆外国人育成就労機構 |
最も大きな違いは転籍が可能となるという点です。
①の「やむを得ない事情がある場合」に関しては、技能実習においても受入れ機関の事情により適用されることがありましたが、育成就労で新たに追加されたのは②の項目です。
転籍に関する詳しい要件はまだ確定していませんが、技能実習制度において問題視された「転職の自由がない」という指摘に対するひとつの解決案といえます。とはいえ、育成就労の目的は「特定技能に移行できる人材の育成」です。短期間で簡単に転籍できてしまうと当然技術修得の効率が落ち、制度の目的にそぐわないものになってしまうので、転職はそれほど簡単にできるものにはならないのではないか、と考えられています。
2027年までに改正案は施行され、技能実習生の受入れもそれまでは可能となる見通しです。今後も、制度について新しい情報がありましたら随時お伝えしてまいります。
新たな制度「育成就労」
【※公開日:2023年12月14日】
技能実習制度の課題を洗い出し適正な外国人材受入れの方向性を見出すことを目的とし、2022年12月14日から16回に渡って有識者会議が開催されました。そして去る2023年11月30日、法務大臣に最終報告書が提出されました。
最終報告書を基に新たな制度「育成就労」の概要を6つのポイントに分け、技能実習制度と比較して違いを解説していきます。
⇒技能実習制度の移り変わりが良く分かるダウンロード資料
制度の比較① 制度の目的
技能実習 | 国際貢献・技術の移転 |
育成就労 | 人材確保と人材育成 |
技能実習制度は開発途上国の経済発展を担う「人づくり」を目的とした国際貢献のための制度です。
育成就労では人材確保と人材育成が目的とされており、就労を目的とすることが明確に打ち出されています。また人材育成という目的も、技能実習のような「母国の発展を担う」ためではなく、特定技能1号に移行可能な人材を育成することとされています。
技能実習制度では国際貢献という目的と実際の制度の在り方に乖離があるという指摘があり、国際的にも問題視されていました。育成就労では人材確保を明言したことで、制度の在り方をクリアにしたという印象があります。
制度の比較② 受入れ可能な職種
技能実習 | 90職種165作業(※移行対象職種) |
育成就労 | 特定技能と同一分野 |
有識者会議の最終案では、育成就労の受入れ可能職種は特定技能と同一とされています。育成就労は特定技能1号に向けての人材育成が目的とされているための措置ですが、これは非常に大きな変更点といえます。
技能実習では職種が合致していれば受け入れることができました。しかし育成就労では特定技能と同様に「協議会への加入」に加えて「産業分類」も合致しなければならないとされています。
⇒特定技能と技能実習の違いが良く分かるダウンロード資料
例えば「惣菜」は食料品製造の職種に分類されますので、スーパーマーケットでも惣菜を作っていれば技能実習生を受け入れることができました。しかし産業分類においてはスーパーマーケットは小売業に分類されますので、食品製造業とは認識されません。同じ総菜を作る作業であっても育成就労や特定技能では受入れが許可されないという事になります。
これが技能実習と育成就労の大きな違いです。
最終報告書の案で審議が進んだ場合、以下の職種は育成就労では受入れが出来なくなる可能性があります。
- ◇ 繊維・衣服関係
- ◇ コンクリート製品製造
- ◇ ゴム製品製造
- ◇ 印刷系
- ◇ スーパーマーケット内の食料品製造
- ◇ 輸送系機械・器具製造
- ◇ 紙器系製造
- ◇ 木材加工
- ◇ 1年のみの実習
特定技能における産業分野が受入れ可能職種の基準となることから、今後上記の職種の分野において、特定技能の受入れ可能分野への追加の動きがでてくるかもしれません。
※関連情報:技能実習生の受入れ可能職種
制度の比較③ 移行条件
技能実習 |
・受入れ前:6ヶ月以上又は360時間以上の講習 ・技能実習2号への移行:技能検定基礎級の合格 ・技能実習3号への移行:技能検定3級の合格 |
育成就労 |
・受入れ前:N5レベルの日本語能力 ・受入れ後1年以内:技能検定基礎級合格 ・特定技能1号移行:日本語能力A2(N4)+技能検定3級or特定技能1号評価試験 ・特定技能2号移行:日本語能力B1(N3)+技能検定1級or特定技能2号評価試験 |
技能実習に比べて、育成就労では日本語力への比重が上がっています。
技能実習は母国の発展を担う人材育成が目的でしたが、育成就労では日本国内の人材確保を目的としていることから、日本語力への要求が大きくなっています。
⇒日本語習得にはコツがあった!?(無料ダウンロード資料)
育成就労の「基本的な在留期間」は3年となっています。3年以内に特定技能評価試験を受験し、在留資格を特定技能へ移行することが求められます。
制度の比較④ 転職・転籍
技能実習 | 原則不可 |
育成就労 | 同一企業で一年以上の就労後、転職可能 |
育成就労では以下の3つ全てを満たす場合、転籍が可能であるとされています。
- ・同一の受入れ機関において就労した期間が1年を超えていること
- ・技能検定基礎級及び日本語能力検定A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること
- ・転籍先となる受入れ機関が、例えば在籍している外国人のうち転籍してきた者の占める割合が一定以下であること、転籍に至るまでのあっせん・仲介状況等を確認できるようにしていることなど、転籍先として適切であると認められる一定の要件を満たすものであること
また育成就労として配属後2年以下で途中帰国した場合、前回とは違う分野で育成就労として改めて来日し就労することも可能とされており、受入れの幅が広がるかもしれません。
制度の比較⑤ 受入れ人数枠
技能実習 | 受入れ企業の規模に伴って上限あり |
育成就労 | (技能実習に準拠) |
現状の案では技能実習1号と同様に、受入れ企業の社員数によって受入れ人数が決定されるということです。
また、特定技能と同じく分野ごとに人数枠の上限が設定され、育成就労全体の合計人数は予め決定されるようです。
※関連情報:技能実習生受入れは何人まで?適正な受入れ人数を解説
制度の比較⑥ 支援・保護のあり方
技能実習 | 外国人技能実習機構が管轄 |
育成就労 | 外国人技能実習機構を改組し、外国人の支援・保護を強化した支援体制を整備した新たな機構へ |
育成就労では外国人技能実習機構が再編成されて新たな機構となり、さらに厳格な監理のもとに制度の運営が行われるとされています。 新たな機構、出入国在留管理局、そして労基準監督署それぞれの機関の連携も強化されますので、これまで以上に法遵守の姿勢が求められることになります。
優良認定を受けた受入れ企業に対しては、申請書類の簡素化のようなインセンティブも考えられているようです。
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まとめ
育成就労に関する最終報告書についてお伝えしてきましたが、現状は「案」であるため、制度が決定された時点で内容が変更になる可能性も十分にあり得ることを予めご了承ください。
育成就労の開始時期は国会での審議の進み具合により前後するでしょうが、今のところ2025年4月以降、もしくは2026年の4月以降といわれています。技能実習から育成就労への移行は緩やかに行われると考えられますので、現状技能実習生の受入れに関して制限する必要はありません。
これからも新たな情報が入りましたら皆様にお知らせいたします。
育成就労に関してご質問等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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