技能実習生を受入れるにあたって、受入人数に上限があることをご存じでしょうか?
技能実習生は、「何人でも受入れられる」というわけではありません。
企業さまの従業員数など各種要件によって、1年間で受入れられる人数が決められています。
今回は技能実習生受入れを初めて検討している企業さま向けに、技能実習生の受入人数について解説していきます。
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- この資料でわかること
- 技能実習生の国籍の選び方
- 技能実習生配属までの流れ
- 配属から2年目、3年目への移行方法
- 技能実習3号と特定技能の違い
01 技能実習生の受入人数枠
技能実習制度は人材育成のための制度であり、育成の環境を保証するために受入人数には上限が設けられています。
受入企業は技能実習責任者のほかに、技能実習指導員、生活指導員を選任する必要があります。
特に技能実習指導員は、技能実習生への指導に加えて安全確保などにも目を配らなければならないため、非常に重要な役割を持ちます。
技能実習生の人数が多ければ、それに応じて技能実習指導員の数も増やす必要があるでしょう。
受入企業は、技能実習生の受入人数に応じた規模でなくてはなりません。
01-01 常勤職員数で受入人数枠が決定
技能実習生の受入れには、1年間の上限数である「基本人数枠」が定められています。
そしてその人数枠は、受入企業の常勤職員数に応じて変わります。
01-02 常勤職員の定義
常勤職員数とは、雇用保険に加入している社員の数です。
雇用保険への加入要件は労働日数が週5日以上、年間 217 日以上であって、かつ、週労働時間が 30 時間以上であることとされています。
また、正社員と同様の就業時間で継続的に勤務している日給月給者で、フルタイムで働いているパートの方も含まれます。
01-03 基本人数枠
常勤職員数 (社会保険加入者数など) |
基本人数枠 (技能実習生の受入れ上限) |
301人以上 | 常勤職員数の1/20人 |
201人~300人 | 15人 |
101人~200人 | 10人 |
51人~100人 | 6人 |
41人~50人 | 5人 |
31人~40人 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
この表の通り、技能実習生の基本人数枠は受入企業の常勤職員数に応じて決まっています。
常勤職員が2名の場合は、常勤職員数を超えて受入れることはできませんので、受入れ可能人数は2人までとなります。
02 優良認定で基本人数枠が倍に
受入企業が優良認定されると、受入人数枠が倍になります。
例えば常勤職員数が100名の企業が優良認定された場合、基本人数枠が6人から2倍の12人となります。
加えて技能実習1号、2号に加えて技能実習3号の受入れも可能となります。
毎年の受入人数の上限が倍の12人になりますので、今後の事業計画も大きく変わることでしょう。
02-01 受入れシミュレーション~優良認定企業の場合
技能実習生の受入れ状況を、常勤職員30人を例にシミュレーションしてみましょう。
常勤職員30人の場合、技能実習生の受入人数枠は3人なので、最初の3年間での受入人数は9人になります。
優良認定が無い企業の場合、受入人数枠は3人のまま、1期生の技能実習生も3年の実習期間を終えて帰国しますので、会社に残る技能実習生は9人となります。
しかし3年目終了時に優良認定を受けたとすると、受入人数枠が倍の6人になり、しかも1期生の技能実習生は技能実習3号として企業に残ることができますので、総勢15人の技能実習生を受入れることが可能になります。
技能実習生の受入れを開始して6年目になると、一般の企業の場合は変わらず受入人数は9人まで、しかし優良認定を受けている場合は24人まで受入れが可能となります。
その後も受入れを続けていけば最大枠が36人になり、優良でない場合の実に4倍の人数が受入れ可能となります。
02-02 優良認定の意義
優良認定を受けることができれば、技能実習生の在籍可能な期間が5年まで延長されるほか、1年間に受入れ可能な人数枠が倍に増えます。
在籍期間の延長は、3年間在籍した実習生が会社に残り続けてくれるため、大きな戦力として期待できます。
また人数枠の拡大は、その企業で活躍できる人数が増えるため、受入企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。
技能実習制度を正しく運用し優良認定を得ることで、こうした特典を受けることができるのです。
02-03 優良認定を受けるためには
優良認定を受けるためには様々な要件があります。
その要件をクリアし、合格基準に達している必要がありますが、事前にその内容を確認し、もしも足りていない場合も改善を進めていくことで優良認定に近づけることでしょう。
企業さまが事前に項目を確認し、要件をクリアしているかどうかがわかるチェックシートを作成いたしましたので、ぜひ優良認定に向けてご活用ください。
03 初めて受入れる場合の適正人数
ここまで、1年間の上限数である基本人数枠について説明してきました。
しかし初めての受入れの場合、「制度上の上限数は分かったけれども、自社で何人を受入れたらいいか分からない」というケースもあるかと思います。
そこで、初めて技能実習生を受入れる企業さま向けに、受入れの適正人数を解説してまいります。
03-01 管理できる人数がおすすめ
初めての技能実習生の受入れは、上限数までではなく、企業さまで管理できる人数を推奨しております。
外国人材を受入れる際は、配属前の準備や技能実習生とのコミュニケーションなど、苦労することが多々あるでしょう。
まだ受入れる体制が整っていないにも関わらず「人数枠が余っているから」といきなりたくさんの技能実習生を受入れると、準備不足からトラブルが発生する可能性が高くなってしまいます。
初めて受入れる際は企業様で管理できる人数からスタートして、経験を重ねてから多くの人数を受入れると良いでしょう。
適正な人数が分からない場合などは、お問い合わせいただけましたら状況を確認のうえご提案いたします。
03-02 受入れ例 ~6人枠の場合~
ここでは、6名の基本人数枠を持つA社の受入れ例をご紹介します。
外国人材の受入れが初めてであるA社は、多くの技能実習生に来てほしいと考えているものの、いきなりたくさんの人数が配属されることに不安を覚えていました。 一番課題に感じていたことは現場のオペレーションです。 実際に外国人材が配属されたときに、現場が上手く回るかどうかを心配していました。そのため、人数枠いっぱいの6名での受入れは難しいと考えていたのです。 ご相談に対応したエヌ・ビー・シー協同組合のスタッフは、一度に3名の配属であれば、試行錯誤をしつつも技能実習生が来たときのオペレーションを確立できると提案しました。 一方で、可能な限り多くの技能実習生に来てほしいという現場の要望に応えるため、半年後にもう3名を追加で採用することにしました。
6名の人数枠を持つA社は、1回の面接で3名、その半年後に3名と、1年間で面接を2回にわけて採用することが可能です。
A社は最初の半年間、3名とのやり取りを通じて現場のオペレーションをしっかり確立させ、その後に人数枠を拡大させていきました。
04 実習生の受入企業に求められる要件
技能実習生を受入れる企業には、様々な要件が求めらます。
技能実習生を受入れる際は「技能実習計画」を作成し、技能実習機構から認定を受けなければなりません。
認定の基準について、詳しく見ていきましょう。
04-01 認定基準① 修得等をさせる技能が技能実習生の本国において修得等が困難な技能等であること
技能実習生は「技術を身につける」ために日本に来るため、母国では修得が困難な技能が身につけられる業務内容である必要があります。
04-02 認定基準② 技能実習の目標
技能実習1号、2号、3号それぞれの期間において、技能検定の合格が目標とされています。
- ・技能実習1号…技能検定基礎級またはこれに相当する評価試験の実技及び学科試験への合格など
- ・技能実習2号…技能検定随時3級またはこれに相当する評価試験の実技及び学科試験への合格
- ・技能実習3号…技能検定随時2級またはこれに相当する評価試験の実技及び学科試験への合格
04-03 認定基準③ 技能実習の内容
技能実習の内容は、以下の要件を満たす必要があります。
- ・同一の作業の反復のみで修得できないこと
- ・移行対象職種・作業に係ること
- ・技能実習を行う事業所で通常行う業務であること
- ・必須業務に従事する時間が全体の2分の1以上であり、関連業務は2分の1以下、周辺業務は3分の1以下であること
- ・技能実習生は本国で同種の業務に従事した経験があるか、特別の事情があること(団体監理型のみ)
- ・帰国後に本国で修得した技能を要する業務に従事する予定があること
- ・第3号の場合、第2号修了後に1か月以上、または第3号開始後1年以内に1か月以上1年未満帰国していること
- ・技能実習生や家族に対して保証金や違約金が課せられていないこと(技能実習生自身が書面で明らかにすること)
- ・第1号の技能実習生には、日本語や出入国、労働関係法令の科目による入国後講習が行われること
- ・複数の職種の場合は、いずれも第2号移行対象職種であり、相互に関連性があり合理的であること
04-04 認定基準④ 実習を実施する期間
技能実習1号は最初の1年間、次の2・3年目が技能実習2号、その次の4・5年目が技能実習3号となります。
04-05 認定基準⑤ 前段階における技能実習(第2号は第1号、第3号は第2号)の際に定めた目標が達成されていること
技能実習2号になる際は、その前の技能実習1号時の試験(技能検定基礎級)に合格していなければなりません。
同様に、技能実習3号になる際は、その前の技能実習2号時の試験(技能検定随時3級)に合格していなければなりません。
04-06 認定基準⑥ 技能等の適正な評価の実施
技能を評価するために、技能検定または相当する評価試験を実施することが求められます。
04-07 認定基準⑦ 適切な体制・事業所の設備、責任者の選任(※)
受入企業は
- 技能実習責任者(技能実習の実施に関する責任者)
- 技能実習指導員(技能実習生への指導を担当)
- 生活指導員(技能実習生の生活指導を担当)
を、事業所ごとに選任する必要があります。
また、申請者は過去5年間に人権侵害行為や偽造・変造された文書の使用を行っていないことを確認し、技能の修得に必要な設備を備えていることが求められます。
04-08 認定基準⑧ 許可を受けている監理団体による実習監理を受けること(団体監理型技能実習の場合)
団体監理型の場合は監理団体を通じて技能実習生を受入れますが、正式に許可を得ている監理団体でなければなりません。
04-09 認定基準⑨ 日本人との同等報酬等、技能実習生に対する適切な待遇の確保
技能実習生の報酬が日本人と同等以上であることを説明し、その内容の書類を添付しなければなりません。
また、適切な宿泊施設の確保や入国後の講習に専念するための措置を講じなければなりません。
さらに、技能実習生との間で食費や居住費などの費用について適正な額で合意し、技能実習計画に明記し、技能実習生が理解したことや額が適正であることを示す書類を添付することも必要です。
04-10 認定基準⑩ 優良要件への適合<第3号技能実習の場合>
技能実習3号に移行する場合はさまざまな条件がありますが、受入企業が優良要件を満たしている必要があります。
04-11 認定基準⑪ 技能実習生の受入人数の上限を超えないこと
技能実習生の受入人数には上限があり、それを超えてはなりません。
上記で解説した基本人数枠のほか、技能実習生の総数にも、下記の通り一定の規定があります。
- 1号技能実習生:常勤職員の総数
- 2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍
- 3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍
05 技能実習生の人数推移
日本全体における、技能実習生の人数推移について見ていきましょう。
技能実習生の数に加え、国籍別、職種別の人数も解説いたします。
05-01 技能実習生数の推移
コロナ禍以前、技能実習生の数は右肩上がりで増加していました。
2000年代後半から2010年代の中盤まではほぼ横ばいでしたが、2014年から2019年の5年間で約2.5倍に増えています。
コロナ禍で入国が停止したことを受けて一時的に数が減ったものの、入国緩和を受けて再び増加しています。

05-02 国籍別受入人数
国籍別で見ると、一番数が多い国はベトナムとなっています。
2023年現在、技能実習生全体の約56%をベトナム国籍が占めています。

技能実習の歴史を紐解くと、2000年代までは中国からの技能実習生が大半でした。
しかし中国の経済発展に伴いベトナムからの受入れが増え、2015年にベトナムが中国を抜いて1位となりました。
ここ数年はベトナムが他国と大差を付けて1位に輝いていますが、ベトナムも経済発展と遂げつつあり、今後はインドネシアやフィリピン、ミャンマーといった国の割合が増えると予想されています。
05-02 職種別受入人数
技能実習生が働ける業種は限られており、農業関係、漁業関係、建設関係、食品製造関係、繊維・衣服関係、機械・金属関係、その他、と大きく分けて7業種、87職種あります(2023年4月現在)。
職種別で見ると、現在は建設関係が一番多く、次いで食品製造関係、その次に機械・金属関係となっています。
建設現場で働く技能実習生や、食品系や機械系の工場で働く技能実習生が数字からも多いことが分かります。

06 まとめ
技能実習生の受入人数について解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
制度の適正な運用と技能実習生の健全な育成のために、受入企業の常勤職員数によって技能実習生の受入人数枠が定められていることがお判りいただけたでしょうか。
技能実習制度の健全な運用と育成状況が評価されて優良認定を受けた場合、受入人数枠が大きく伸長されますので、技能実習生の受入企業にとって、優良認定を受けることは大きな意味があります。
ただし、受入企業だけが優良認定を受けていても人数枠は変わりません。
監理団体も優良の証明である「一般監理事業」に認定されている必要があります。
エヌ・ビー・シー協同組合は、優良認定が導入された2017年に一般監理事業に認定されました。
20年の豊富なサポート実績がありますので、初めて技能実習生を受入れる企業さまでもご安心いただけるかと思います。
技能実習制度を健全に運用し、優良認定を目指しましょう。