現在、外国人材を受け入れる方法として、大きく分けて技能実習と特定技能がありますが、
- 「制度の違いがよくわからない」
- 「どちらの方法が自社にあっているのか教えてほしい」
といったご相談を受けることがよくあります。
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本記事では、技能実習と特定技能を9つのポイントにわけて徹底比較していきます。それぞれの制度のメリット・デメリットや、月々の費用を比較し、技能実習生から特定技能への移行方法についてもご案内していきます。
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【徹底比較】技能実習特定技能
- 技能実習と特定技能を徹底比較
- 技能実習のメリット・デメリット
- 特定技能のメリット・デメリット
- こんな会社は技能実習がお勧め
- こんな会社が特定技能がお勧め
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技能実習制度と特定技能制度9つの違い
技能実習制度と特定技能制度の違いについて、9つの視点から見てみましょう。
比較するでより、両制度の特徴もさらに分かりやすくなります。
制度の目的
技能実習制度 | 特定技能制度 |
技術の移転、人材育成、国際貢献を目的とする制度 | 特定の産業分野に限り、一定の専門性・技能を有する外国人材を確保するための制度 |
技能実習制度の目的は「技術の移転」および「国際貢献」です。
日本の技術・技能を、開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。
そのため、技能実習生は検定試験に合格し、技能の修得を証明する必要があるのです。
一方、特定技能制度の目的は「人材確保」です。
日本の深刻な労働力不足に対応するため、人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的としています。
即戦力の人材の証明として、評価試験への合格や技能実習2号の良好な修了が求められます。
法的根拠
技能実習制度 | 特定技能制度 |
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 | 出入国管理及び難民認定法 |
技能実習制度に関する取り決めは「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(通称:技能実習法)」によって定められています。
一方、特定技能制度に関する取り決めは「出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)」によって定められています。
受入れ対象職種・分野
技能実習制度 | 特定技能制度 |
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技能実習制度では、受入れ可能な職種が決められています。
技能実習2号への移行ができる職種のことを「移行対象職種」とし、従事する業務内容についても一定の規定が定められています。
2号移行対象職種は、2024年3月現在90職種165作業となっています。
※関連情報:技能実習生受入れ可能職種【職種別詳細情報】
特定技能制度においても、受け入れが可能な分野が決められており、2023年8月現在12分野14業種で認められています。
受入れ方法
技能実習制度 | 特定技能制度 |
・団体監理型 ・企業単独型 |
企業が直接雇用 (支援を登録支援機関に委託可能) |
技能実習生は「団体監理型」と「企業単独型」の2つの受入れ方法があります。
「団体監理型」は監理団体を通じて受入れる方法で、全体の99%がこの方法で受入れを行っています。
「企業単独型」は海外に支店や取引先を持つ企業に限られた受入れ方法です。
どちらの方法も「技能実習計画」を作成し計画に沿って技能実習を行うほか、定期監査を受けて法令を遵守する必要があります。
一方、特定技能制度は企業が直接雇用し、外国人労働者に対して支援を行うことが求められます。
必須の支援には入管への定期報告や母国語での相談対応などがあり、自社だけで支援体制を完備できる企業様はあまり多くないでしょう。
支援の一部または全部を登録支援機関に委託することができるため、多くの企業では登録支援機関を活用しています。
受入れ可能人数
技能実習制度 | 特定技能制度 |
受入れ企業の常勤職員数に応じた上限 | 基本的に上限なし(建設分野・介護分野を除く) |
技能実習制度では、人材育成の観点から、受入れ人数の上限が定められています。
受入企業の常勤職員数に応じて基本人数枠が決められており、例えば常勤職員数が100人の場合は、1年間に受入れ可能な基本人数は6人が上限となります。また、優良認定を受けることができれば、1年間に受入れ可能な人数枠が倍に増えます。
【関連記事:技能実習生受入れは何人まで?適正な受入れ人数を解説】
一方、特定技能制度においては、基本的に受入れ人数の制限はありません。
ただし建設分野と介護分野においては、一定の制限があります。
建設分野では、特定技能と特定活動の在留資格で就労する外国人労働者の合計が、受け入れる企業の常勤職員の人数まで、と決められており、また介護分野では事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限としています。
転職の可否
技能実習制度 | 特定技能制度 |
転籍制限あり(実習継続が困難な場合は転籍可) | 転籍制限なし(異なる分野への転籍は試験の合格が必要) |
技能実習は人材育成の観点から、契約を交わした実習先の企業で技術を学ぶことが求められており、基本的に転職は認められていません。
ただし、実習実施者において技能実習の継続が困難になった際には、実習生が希望すれば同一業種の他の企業に「転籍」することが可能です。
一方、特定技能は労働者であるため、転職の自由が認められています。
同じ業種で転職をする場合には特に問題はありませんが、異業種への転職は注意点があります。
特定技能の在留資格を得るためには、その分野の特定技能評価試験の合格が必須で、異業種へ転職する場合には就労先の特定技能評価試験に合格しなければなりません
また転職可能といっても、アルバイトなど自由に仕事ができるわけではなく、仕事が変われば出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行い、認可を受ける必要があります。
在留期間
技能実習制度 | 特定技能制度 |
基本的に3年間(条件を満たせば2年間の期間延長が可能) |
特定技能1号ビザ:最長5年間在籍可能 特定技能2号ビザ:在籍期間に制限なし |
技能実習制度では、原則として3年間就労先の企業に在籍することになっています。
しかし技能検定3級試験の合格や受入れ企業の優良認定などの条件をクリアすれば、プラス2年間の延長が可能となり、最大で5年間在籍できます。
一方特定技能制度では、「特定技能1号」のビザでは、5年間の滞在が可能です。
建設や造船の分野では「特定技能2号」への移行が認められており、2号のビザは在籍期間の制限がありません。
また、特定技能2号になれば、家族の帯同も可能になります。
関係する事業者
技能実習制度 | 特定技能制度 |
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技能実習の場合、関係する機関は技能実習生本人と受入れ企業のほかに
- ・監理団体(団体監理型の場合)
- ・送出し機関(団体監理型の場合)
- ・技能実習機構
- ・出入国在留管理庁
一方特定技能の場合は特定技能外国人と受入れ企業のほかに
- ・登録支援機関(支援を委託する場合)
- ・出入国在留管理庁
給与・月々の費用
技能実習制度 | 特定技能制度 |
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技能実習生の月々の給与は、日本の法律が適用されますので、最低賃金以上であることが求められます。
また、技能実習の場合は監理団体への監理費がかかりますが、おおむね30,000円から50,000円となります。
特定技能の月々の給与に関しては、同様の業務に携わる日本人と同一賃金である必要があります。
登録支援機関を利用している場合、月々の支援委託費用としておおむね20,000円から35,000円がかかります。
また、職種により協議会費用がかかる場合があり、建設分野では月々12,500円~20,000円の会費がかかります。
技能実習制度と特定技能制度のメリット・デメリット
続いて、技能実習と特定技能のそれぞれのメリットとデメリットをみていきましょう。
技能実習・特定技能のメリット
技能実習制度のメリット | 特定技能制度のメリット |
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技能実習制度のメリットは「計画的に受入れができる」ことだといえます。
受入れ企業は中長期的な計画をもとに、安定して人材の受入れをおこなうことができます。
- 技能実習のメリット
- ・人員確保が比較的容易
- ・国籍や性別など希望する条件で募集可能
- ・計画的に受入れが可能
- ・基本的に3年間は同じ企業で就労
特定技能制度のメリットは「即戦力の人材を受け入れられる」ことです。
技能実習生と比べ日本語能力が高く、業務内容の理解もしているため、配属後すぐに活躍できる可能性が高くなります。
- 特定技能のメリット
- ・日本語力が比較的優れている
- ・就労経験があり、即戦力として採用できる可能性がある
技能実習・特定技能のデメリット
技能実習制度のデメリット | 特定技能制度のデメリット |
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技能実習制度のデメリットは、配属までに時間がかかることや、配属後に時間と労力がかかってしまうことが挙げられます。
受入れを決めてから配属までには最短で7ヵ月かかります。この間、日本では技能実習機構や出入国在留管理庁への申請を行います。技能実習生は母国で日本語の教育などを行います。
技能実習生は配属までに約半年間日本語の勉強をしますが、配属初日から流暢に日本語を話せる技能実習生はかなり少ないでしょう。最初は日本語のコミュニケーションに苦労することも、技能実習制度のデメリットと考えられます。
- 技能実習のデメリット
- ・配属までに時間がかかる(最短7ヵ月)
- ・教育に時間がかかる
- ・入国直後は日本語でのコミュニケーションに苦労することがある
特定技能制度のデメリットは、募集の難しさと転職のリスク。が挙げられます
- 特定技能制度のデメリット
- ・海外での試験が限定的であるため、人員確保が比較的難しい
- ・候補者が多く存在せず、国籍や性別を絞ると募集が難しくなる可能性がある
- ・国内転籍の場合、本人の在留期限等によって配属時期が異なるため、いつ配属できるか見通すことが難しい
- ・すぐに辞めてしまう可能性がある
技能実習から特定技能への移行方法
技能実習から特定技能に移行する方法について、技能実習生と受入れ企業それぞれの観点から確認しましょう。
特定技能への移行方法~技能実習生の場合
技能実習生が特定技能の在留資格を得るためには
- ・日本語の試験(N4、またはこれに相当する試験)
- ・特定技能評価試験
の2つに合格する必要があります。
技能実習から特定技能に移行する場合、同一職種への移行であれば「技能実習2号を良好に修了すること」で試験を免除して特定技能移行することができます。また、技能実習生として日本に在籍し、修了後に異業種への特定技能に移行する場合は、日本語の試験は免除され、その分野の特定技能評価試験に合格する必要があります。
特定技能への移行方法~受入れ企業の場合
技能実習生として在籍している外国人材をそのまま特定技能に移行させる場合、企業では下記の2つが必要です。
- ・適切な支援の実施(登録支援機関に委託可能)
- ・協議会に加入すること
特定技能外国人材を受け入れる企業は、当該外国人材に対する支援計画を作成し、支援を実施しなければなりません。
必須の支援項目には下記の10個が挙げられており、受入れ企業はその体制を整える必要がありますが、支援の全部または一部を登録支援機関に委託することができるので、必要に応じて登録支援機関を活用すると良いでしょう。
- ・事前ガイダンス
- ・出入国する際の送迎
- ・住居確保・生活に必要な契約支援
- ・生活オリエンテーション
- ・公的手続きへの同行
- ・日本語学習の機会の提供
- ・相談・苦情への対応
- ・日本人との交流促進
- ・転職支援(人員整理等の場合)
- ・定期的な面談・行政機関への通報
また、特定技能外国人材を受け入れる企業は、制度の適正な運用を図るために特定の産業分野ごとに設置された「協議会」への加入が必須となります。 経済産業省管轄の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」では、特定技能外国人材を受け入れる前に加入しなければなりませんが、その他の分野では受入れ後4ヵ月以内に加入することとされています。
まとめ~今後の動向
技能実習と特定技能、それぞれの特徴やメリット、デメリットについてお判りいただけましたでしょうか。
「中長期的に安定して外国人材の受入れをしたい」企業様は技能実習を、「即戦力の外国人材の受入れをしたい」企業様は特定技能が適しているといえます。
2023年11月に「技能実習・特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書が提出され、制度改正の動きがでてきています。新制度は人材育成の観点を残しつつ、特定技能制度との関係をより強化したものになりそうです。
※関連情報:【解説】技能実習に代わる新制度「育成就労」とは
エヌ・ビー・シー協同組合は、技能実習の監理団体であり、特定技能の登録支援機関でもありますので、制度の動向を確認しつつ、御社に合った最適な方法のご提案が可能です。
技能実習と特定技能でお迷いの企業様はぜひお気軽にお問合わせください。