出入国在留管理庁の発表した統計では、2022年6月現在ベトナム人技能実習生の数は181,957人で、国別で1位となっています。
技能実習生全体の実に56%を占めており、「技能実習生といえばベトナム」とイメージされている方も多いのではないでしょうか。
今回は、技能実習生No.1送出し国のベトナムについて、国民性や特徴を深堀り解説してまいります。
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【実習担当者必読 ベトナムの今】

- ベトナム人技能実習生が増えた理由
- ベトナムの「今」の状況
- 若者世代の環境の変化
- 日本以外で働く選択肢
- これから受入れるためには
01 技能実習生送出し国ベトナムについて
まずは、技能実習生No.1送出し国ベトナムの基本情報についてみていきましょう。
01-01 地理
ベトナムの国土は面積が約329,241平方キロメートルで、日本の5分の4ほどの大きさです。
日本と同じようにS字状に南北に細長い形で、南北で気候も風土も大きく違います。
ベトナムは温暖な国だとイメージされる方も多いですが、北部は山岳地帯が広がり、冬は非常に寒くなります。
南部は年間を通じて温暖な気候で、湿気が多く日射量が豊富です。
首都ハノイは北部に位置し、ベトナムの政治・文化の中心地です。
南部の中心都市はホーチミンです。
昔は「サイゴン」とよばれていましたが、現在は建国の父の名前を取り「ホーチミン」とよばれています。
01-02 人口
2023年現在、ベトナムの総人口は約9,885万人で、日本の約5分の4です。
近年、ベトナムは労働生産人口比率が高い「人口ボーナス期」を迎えました。
労働人口の多さによって、著しい経済成長を遂げています。
今後も人口は増え続けると予想されており、2050年ごろには約1億1,000万人になるといわれています。
人口が増える一方で、高齢者の割合も増えつつあり、その要因は1988年に導入された「ふたりっ子政策」にあるといわれています。
当時、ベトナム政府は人口抑制と貧困解消のため、出産は2人までにとどめることを奨励しました。
3人以上の出産でも厳しい罰則はありませんでしたが、想定以上に高齢化が進み、2017年にこの政策が撤廃されました。
高齢化社会がすぐそこまで迫っているベトナムでは、アジアの先進国とされる日本から多くのことを学ぶため、特に最近では「EPA」や「技能実習介護職」といった介護の分野に注目が集まっています。
01-03 言語
ベトナムの公用語は「ベトナム語」です。
ベトナムは他民族国家ですが、総人口の87%を占めるキン族の母語が公用語として採用されており、他の民族もこのベトナム語を使用しています。
ベトナム語は中国語の影響が大きく、漢字由来の言葉がたくさんあります。
例えば、「ありがとう」はベトナム語で「cảm ơn(カムオン)」ですが、漢字で書くと「感恩」と書きます。
また、漢字の音読みとベトナム語の発音が類似している言葉もあり、「古代」はベトナム語で「cổ đại(コーダイ)」です。
01-04 宗教
ベトナム人の多くは、仏教徒(大乗仏教)であるといわれています。
実際には仏教や儒教、道教(中国の民間宗教)が混ざりあっており、お寺の他に民間の神が祀られた神社にお参りすることも多いようです。
無宗教だと自覚する人も多数いるため、宗教観は日本と近いものがあるといえるのではないでしょうか。
仏教のほかには、フランス統治の影響からキリスト教や、ベトナム南部発祥のカオダイ教という新興宗教が少数存在します。
01-05 食べ物
ベトナムの食べ物では、北部を中心にフォー(ライスヌードル)が有名です。
また、南部ではフーティウという麺料理が人気があります。
他にも、生春巻きやバインミー(ベトナム風サンドイッチ)なども有名です。
ベトナム人技能実習生が必ず持っている、ヌクマムという調味料をご存じでしょうか。
これは魚醬の一種でナンプラーに似ていますが、エヌ・ビー・シー協同組合のベトナム人スタッフ曰く「ヌクマムとナンプラーは全然違います!」とのことで、ヌクマムの方が香りが強いそうです。
ベトナム人技能実習生の寮には、必ずと言っていいほどこの調味料が置いてあり、この調味料で母国の味を再現しています。

これがヌクマムだ!
最近はスーパーやディスカウントストアにもヌクマムが置いてあることがあるので、見かけた際にはベトナム料理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
01-06 平均収入
ベトナム統計総局が発表した資料によりますと、2022年の月間平均所得は約3万6千円です。
10年前の2010年と比較すると、月間平均所得は3倍以上増えており、経済成長を実感できる数字となっています。
ただし、経済発展の恩恵をうけているのは主に都市部で、農村部との格差は約1.6倍あるといわれています。
02 ベトナム人の国民性
技能実習生と付き合う上で、国民性や特徴を知ることはとても重要です。
性格は人それぞれではあるものの、一般的にいわれている国民性や性格、特徴を把握しておくことで、技能実習生とのコミュニケーションが円滑に進むことでしょう。
ここでは、ベトナム人の国民性や性格、受け入れた際のポイントをみていきましょう。
02-01 ベトナム人の国民性 ①親日
ベトナムの人々の多くは、日本に対して非常に良いイメージを持っています。
日本のアニメや漫画が人気で、さらに政治・経済面で関係性が密接にあることが要因だと考えられます。
若者の間では「日本に行くこと」が憧れの対象にもなっており、日本での技能実習を希望する人がたくさんいます。
02-02 ベトナム人の国民性 ②手先が器用
ベトナムの伝統工芸は縫製や刺繍などが有名で、ベトナム人は手先が器用な方が多いといわれています。
細かい作業が得意なことを活かして、技能実習の現場でも、たくさんのベトナム人実習生が活躍しています。
02-03 ベトナム人の国民性 ③団結力がある
ベトナムの方は家族や同族への帰属意識が強く、その価値観を大切にします。
日本国内でもベトナム人同士のコミュニティが多く形成されていて、お互いが助け合いながら生活を送っています。
配属した企業でも帰属意識も持ってもらえるよう、会社全体で技能実習生を歓迎することが大切です。
02-04 ベトナム人の国民性 ④陽気
人それぞれではありますが、ベトナムの方は陽気な性格が多いといわれています。
楽観的な考えを持ち、明るく積極的に行動する人が多い傾向があります。
おしゃべり好きでコミュニケーションを積極的にとるため、日本人の方とも仲を深めることができるでしょう。
02-05 ベトナム人の国民性 ⑤マイペース・計画性がない
ベトナム人は自分の気持ちに正直な方が多く、比較的マイペースです。
また、その場の自分の気持ちに従って行動するため、計画性がないと捉えることもできます。
ベトナムは歴史上、戦争や植民地支配を経験したことから「今」が大事だという価値観を持っている人が多く、このような価値観の方が多いと考えられています。
行動力があるなど良い側面もありますが、実習の現場では注意が必要かもしれません。
03 ベトナム人技能実習生の特徴
ベトナムの国民性をみてきましたが、次に技能実習生として受け入れた際の特徴をみていきましょう。
技能実習生としてのベトナム人は、総じて「真面目に一生懸命働く」という印象があります。
実際に受け入れている企業さまからも、そのような声をいただくことがほとんどです。
また、明るい性格で職場の方から可愛がられることも多く、職場に活気を与える存在になることも多くあります。
日本人ばかりの職場であっても、技能実習生から積極的にコミュニケーションを取りに行って、配属早々に打ち解けてしまうことも珍しくありません。
一方で、マイペースな性格から「自分はこう思う」と、ルールから逸脱した行動をしてしまうことがあります。
このトラブルの原因は、実習の現場でコミュニケーションや意思の疎通が足りていない場合がほとんどですので、技能実習生への話し方や指導方法などには、しっかり意思の疎通を心掛ける工夫が必要です。
04 ベトナム人技能実習生を受入れる際のポイント
ベトナム人技能実習生を受け入れる際、押さえておくべき大切な3つのポイントが3つあります。
それは
-
「給与設定」
-
「実習生への指導方法」
-
「日常生活のサポート」
です。
順にみていきましょう。
04-01 ポイント①給与設定
ベトナム人技能実習生を受け入れる上で、給与設定は非常に重要です。
ベトナム人技能実習生はSNS上でたくさんの人と繋がっており、他人の給与を聞くことが一般的となっています。
もし相対的に低い場合は、「私の給与が低い!」と不満が溜まり、賃金でのトラブルに発展することもあります。
給与に不満を溜め続けると、SNSでの犯罪の誘いなどの甘い罠にかかり、最悪の場合失踪してしまう可能性もあります。
そういったケースを避け、円滑に技能実習を行うためには、ある程度の給与の保証が必要です。
エヌ・ビー・シー協同組合では、ベトナム人技能実習生を受け入れる際の目安として、手取りで13万円以上の設定をお願いしております。
04-02 ポイント②実習生への指導方法
技能実習生を指導するうえで重要なポイントは「理由を伝える」ということです。
作業内容の意義や理由を理解できないと、「自分はこう思う」と違うやり方で行ってしまうことがあります。
また、業務の意義や目的がわからないと、実習へのモチベーションを保つことは難しくなります。
ベトナム人技能実習生は、日本人よりもその傾向が顕著かもしれません。
そのため「単なる仕事・実習」ではなく「○○を作ることで○○のような意味があり、喜んでくれる人がいる」このような意義や目的をしっかりと伝えることで実習に対する意欲も変わっていきます。
実習の現場で常に顔を突き合わせる技能実習指導員の方は、ぜひこのポイントを押さえて指導してください。
04-03 ポイント③日常生活のサポート
日本に在留しているベトナム人は増え続けており、在留の国籍別では3位となっています。
ベトナムの食料品が入手しやすくなるなど環境が整いつつありますが、それでも外国人が日本で生活を送ることは困難を伴います。
そんな技能実習生の生活をサポートするのは生活指導員の大切な役割です。
技能実習生が日本で円滑に生活を送れるように、「何か困ってることがないか」などこまめに連絡をとりながら、サポートしましょう。
05 ベトナム人技能実習生が増えた理由
ベトナム人技能実習生の数は、2010年代から右肩上がりで増加しており、現在は国別で1位となっております。
増加の理由は
-
中国人技能実習生の減少
-
国民性が親日
-
外貨の獲得手段
の3つが挙げらえれます。
05-01 ベトナム人技能実習生が増えた理由⑫中国人技能実習生の減少
2010年代以前の能実習生は、中国人が主流でした。
ベトナム人技能実習生を増加した決定的な契機は、2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)といわれています。
これにより中国からの受け入れが停止し、ベトナムからの受け入れが一気に増加しました。
その後も、中国の経済発展に伴い中国人技能実習生の募集が難しくなり、代わってベトナム人技能実習生の数が増えていきました。
05-02 ベトナム人技能実習生が増えた理由②国民性が親日
ベトナムは、親日の国として知られています。
アニメやマンガなどで日本文化に親しみを持っているほか、政治や経済面で多くの連携を取っていることが要因だといわれています。
また、日本は経済が発展している、治安がよく生活環境が整っている、などの良いイメージが定着しており、そのことから技能実習を希望する人が多くいます。
05-03 ベトナム人技能実習生が増えた理由③外貨獲得の手段
ベトナム政府は外貨獲得の手段として、ベトナム人の海外就労を支援しています。
世界銀行の統計データによると、海外にいるベトナム人の母国への送金額は約1兆8348億円で、ベトナムのGDPの6.4%に相当します。
日本にいるベトナム人技能実習生も、ベトナムの国策によって来日し、ベトナムの経済に貢献しているともいえます。
06 これからもベトナム人技能実習生を受入れるために
近年、ベトナムは著しい経済発展を遂げており、以前のように多数の応募を集めることが難しくなっています。
要因として、ベトナム国内での所得の増加や教育水準の向上、求人数の増加が挙げられ、技能実習へのインセンティブが以前ほど働かなくなっているといわれています。
ベトナムから受け入れるハードルが高くなっている現在、カギとなるのは賃金です。
手取り額で13万円以上の確保をお願いしているほか、手当や昇給の設定も重要になります。
ベトナム人技能実習生を受入れる前にぜひベトナムの現状を知り、技能実習生の受入れに備えましょう。
エヌ・ビー・シー協同組合は御社の技能実習の成功のためにしっかりサポートしてまいります。