出入国在留管理庁の発表した統計では、2024年10月現在ベトナム人技能実習生の数は203,184人で、国別で1位となっています。 技能実習生全体の実に50.2%を占めており、「技能実習生といえばベトナム」というイメージもすっかり定着しました。
しかし一方で、「ベトナムでの面接で人数が集まらなかった」「ベトナムから他国への受け入れ先変更を考えている」という声を聞くことが増えました。ベトナムの経済発展や円安の影響で技能実習生にまつわる状況に変化がおこっています。
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今回は技能実習生No.1送出し国のベトナムについて、国民性や特徴など基本情報から、ベトナムの変化や2024年現在の状況まで、詳しく解説してまいります。
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【実習担当者必読 ベトナムの今】
- ベトナム人技能実習生が増えた理由
- ベトナムの「今」の状況
- 若者世代の環境の変化
- 日本以外で働く選択肢
- これから受入れるためには
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ベトナムの基本情報
まずは、「技能実習生No.1送出し国ベトナム」の基本情報についてみていきましょう。
地理
ベトナムの国土は面積が約329,241平方キロメートルで、日本の5分の4ほどの大きさです。
ベトナムは温暖な国とイメージされることが多いですが、日本と同じようにS字状に南北に細長い形で、南北で気候も風土も大きく違います。北部は山岳地帯が広がり、冬は非常に寒くなります。南部は年間を通じて温暖な気候で、湿気が多く日射量が豊富です。
首都ハノイは北部に位置し、ベトナムの政治・文化の中心地です。
南部の中心都市はホーチミンです。昔は「サイゴン」とよばれていましたが、現在は建国の父の名前を取り「ホーチミン」とよばれています。
人口
2024年、現在ベトナムの総人口は約1億100万人といわれています。
近年、ベトナムは労働生産人口比率が高い「人口ボーナス期」を迎えました。労働人口の多さによって、著しい経済成長を遂げています。今後も人口は増え続けると予想されており、2050年ごろには約1億1,000万人になるといわれています。
人口が増える一方で、高齢者の割合も増えつつあり、その要因は1988年に導入された「ふたりっ子政策」にあるといわれています。 当時、ベトナム政府は人口抑制と貧困解消のため、出産は2人までにとどめることを奨励しました。 3人以上の出産でも厳しい罰則はありませんでしたが、想定以上に高齢化が進み、2017年にこの政策が撤廃されました。
高齢化社会がすぐそこまで迫っているベトナムでは、アジアの先進国とされる日本から多くのことを学ぶため、特に最近では「EPA」や「技能実習介護職」といった介護の分野に注目が集まっています。
言語
ベトナムの公用語は「ベトナム語」です。
ベトナムは他民族国家ですが、総人口の87%を占めるキン族の母語が公用語として採用されており、他の民族もこのベトナム語を使用しています。
ベトナム語は中国語の影響が大きく、漢字由来の言葉がたくさんあります。例えば、「ありがとう」はベトナム語で「cảm ơn(カムオン)」ですが、漢字で書くと「感恩」と書きます。 また、漢字の音読みとベトナム語の発音が類似している言葉もあり、「古代」はベトナム語で「cổ đại(コーダイ)」です。
宗教
ベトナム人の多くは、仏教徒(大乗仏教)であるといわれています。実際には仏教や儒教、道教(中国の民間宗教)が混ざりあっており、お寺の他に民間の神が祀られた神社にお参りすることも多いようです。無宗教だと自覚する人も多数いるため、宗教観は日本と近いものがあるといえるのではないでしょうか。
仏教のほかには、フランス統治の影響からキリスト教や、ベトナム南部発祥のカオダイ教という新興宗教が少数存在します。
食べ物
ベトナムの食べ物では、北部を中心にフォー(ライスヌードル)が有名です。また、南部ではフーティウという麺料理が人気があります。他にも、生春巻きやバインミー(ベトナム風サンドイッチ)なども有名です。
ベトナム人技能実習生が必ず持っている、ヌクマムという調味料をご存じでしょうか。これは魚醬の一種でナンプラーに似ていますが、エヌ・ビー・シー協同組合のベトナム人スタッフ曰く「ヌクマムとナンプラーは全然違います!」とのことで、ヌクマムの方が香りが強いそうです。 ベトナム人技能実習生の寮には、必ずといっていいほどこの調味料が置いてあり、この調味料で母国の味を再現しています。
これがヌクマムだ!
最近はスーパーやディスカウントストアにもヌクマムが置いてあることがあるので、見かけた際はベトナム料理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
平均収入
ベトナム統計総局によると、ベトナムの2024年の月間平均所得は約4万5千円です。2010年と比較すると月間平均所得は3倍以上増えており、経済成長を実感できる数字となっています。
ただし、経済発展の恩恵をうけているのは主に都市部で、農村部との格差は約1.6倍あるといわれています。
ベトナムの国民性
ベトナム人技能実習生を受け入れる上で、国民性や特徴を知ることはとても重要です。
性格は人それぞれではあるものの、国民性や性格、特徴を把握しておくことで、技能実習生との日頃のコミュニケーションも円滑に進むことでしょう。
ここでは、ベトナム人の国民性や性格、受け入れた際のポイントをみていきましょう。
親日国である
ベトナムの人々の多くは、日本に対して非常に良いイメージを持っています。日本のアニメや漫画が人気で、さらに政治・経済面で関係性が密接にあることが要因だと考えられます。
若者の間では「日本に行くこと」が憧れの対象にもなっており、日本の文化への憧憬から日本での技能実習を希望する人がたくさんいます。
手先が器用
ベトナム人は手先が器用で、縫製や刺繍などの伝統工芸が有名です。美しい陶器や漆器、アオザイなども観光客に人気があります。技能実習でも手先の器用さを活かし、製造業などの現場で活躍しています。
団結力がある
ベトナム人は家族や同族への帰属意識が強く、その価値観を大切にします。日本国内でもベトナム人同士のコミュニティが多く形成されていて、お互いが助け合いながら生活を送っています。
技能実習生として受け入れた企業でも、帰属意識も感じられるよう会社全体で技能実習生を歓迎することが大切です。
陽気
ベトナム人は陽気な性格が多く、楽観的な考えを持ち、明るく積極的に行動する傾向があります。おしゃべり好きでコミュニケーションを積極的にとるため、技能実習の現場でも日本人と親睦を深めることができるでしょう。
マイペース・計画性がない
ベトナム人は自分の気持ちに正直な方が多く、比較的マイペースです。また、その場の自分の気持ちに従って行動するため、計画性に乏しい傾向もあります。ベトナムは歴史上、戦争や植民地支配を経験したことから「今」が大事だという考えを持っている人が多いといわれています。
行動力があるなど良い側面もありますが、飽きっぽい場合もあるため技能実習の現場では注意が必要かもしれません。
ベトナム人技能実習生が増えた理由
ベトナム人技能実習生の数は、2010年代から右肩上がりで増加しており、現在は国別で1位となっています。
増加の理由は
- ①中国人技能実習生の減少
- ②国民性が親日
- ③外貨の獲得手段
の3つが挙げられます。
理由① 中国人技能実習生の減少
2010年代以前の技能実習生といえば中国人でした。しかし、2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)により中国からの技能実習生受入れが停止する事態となり、代わってベトナムからの受入れが一気に増加しました。
SARSの流行が収まった後も、中国の経済発展に伴い中国人技能実習生の募集が難しくなり、そのままベトナムからの技能実習生の受入れが増えていきました。
理由② 日本への良いイメージ
ベトナムは、親日の国として知られています。
アニメやマンガなどで日本文化に親しみを持っているほか、政治や経済面で多くの連携を取っていることが要因だといわれています。
加えて「日本は経済が発展している」「治安がよく生活環境が整っている」などの良いイメージから、日本での技能実習を希望する人が増えました。
理由③ 外貨獲得の手段
ベトナム政府は外貨獲得の手段として、ベトナム人の海外就労を支援しています。世界銀行の統計データによると、海外のベトナム人による母国への送金額は約1兆8348億円で、ベトナムのGDPの6.4%に相当します。
ベトナムの国策で外貨獲得の手段として技能実習が奨励され、数多くのベトナム人が技能実習生として来日しました。
近年(~2024年)のベトナム人技能実習生
近年のベトナムは著しい経済発展を遂げていることでも知られていますが、技能実習生にまつわる状況にも変化が起こっています。特にコロナ禍以降は、ベトナムの送出し機関から「以前のように多数の応募を確保するのが難しくなった」という声を聞くようになりました。
ベトナム人技能実習生にまつわる状況について、ベトナム国内の変化と、技能実習の環境の変化という2つの観点から見ていきましょう。
ベトナム人技能実習生の変化① ベトナム国内の変化
多くのベトナム人は、日本での技能修得に加え、母国の家族の生活のために日本へ行くことを望み、2010年代は技能実習の希望者が殺到していました。しかしベトナムの経済成長により、状況が変化しているようです。
国内の変化① ベトナム国内の所得増加
ベトナムでは経済発展に伴い、国内でもある程度の収入を得られるようになりました。
現在都市部での収入は5〜6万円で、依然として農村部との収入格差はありますが、都市部に出ればある程度の収入を得られるため借金をしてまで海外へ出稼ぎにいくメリットが薄れています。
そのため、日本の技能実習ではなく、都市部に出て働く選択をする若者が多くなっています。
国内の変化② 教育水準の向上
ベトナムでは大学進学率が上がっており、これも技能実習希望者が減少している要因になっています。2000年初頭には10%以下だった大学進学率が現在では30%前後といわれており、他国と比較するとまだ高くはありませんが、大学への進学希望者が増えてきています。
技能実習を希望するのは高卒以下の人がほとんどですので、教育水準と大学進学率の向上が、技能実習希望者が減少している要因の一つと考えられます。
国内の変化③ 都市部での就業機会の増加
現在ではベトナム国内でも都市部に出れば仕事がたくさんあり、若者は仕事を選べる状況になっています。 日本で技能実習を希望する場合でも、屋内の比較的軽作業の仕事は人気ですが、建設業や農業など、屋外で体力を使う仕事は募集が難しくなっています。
ベトナム人技能実習生の変化② 技能実習の環境の変化
国内の経済的な事情だけでなく、技能実習を取り巻く環境にも変化が起こっています。
環境の変化① 日本以外での就業先の増加
ベトナムの若者が選ぶ就業先が、日本での技能実習だけでなくアジア各国や欧米になるケースが増えてきました。
実力主義の労働環境を好むベトナム人のニーズや、円安の影響などから日本以外の選択肢が増えており、2022年からはオーストラリアもベトナム人労働者の受入れを開始しました。
日本での技能実習以外の選択肢が増えたこともベトナムの技能実習希望者が減少している要因のひとつです。
環境の変化② 他国と比較して来日前の経済負担大
2022年7月に発表された出入国在留管理庁の調査では、技能実習生の送出し機関又は仲介者へ支払った費用の総額は、国別でベトナムが一番多くなっています。 ベトナムはブローカーなど仲介業者を介した人材募集が一般的であるため、仲介費用が上増しされる分、他国よりも高くなる傾向があり、技能実習へのインセンティブが下がる要因となっています。
2024年現在のベトナム人技能実習生の状況
近年のベトナムからの技能実習希望者の減少をお伝えしましたが、2023年になって状況が変わり、技能実習希望者が再び増加しました。どのような変化があったのでしょうか。
ベトナム国内での企業活動規制
ベトナムでは企業活動の規制が厳しくなり、外資系の企業が相次いで撤退しています。
企業の撤退に伴い失業者が増加し、都市部に流れたり国外での就労先を探しており、技能実習も選択肢の一つとして再びクローズアップされている状況があります。
情勢不安による就労機会減少
従来はベトナム国外の就労先として、ヨーロッパも選択肢にありました。 しかし近年の情勢不安により、ヨーロッパでの就労機会が減少しました。就労先国の選択肢が少なくなったことも、技能実習希望者の増加につながっています。
来日前の経済負担減少
2022年1月1日、「契約に基づいて海外で働くベトナム人労働者に関する法律」が施行されました。
この法律は、海外で働くベトナム人の保護を目的とした法律で、保護の対象は技能実習生にも及んでいます。
新法では送出し機関に支払う仲介費用の上限が「就業先の賃金の3ヶ月分まで」となり、さらに日本側から支払われる月額5,000円程度の「送出し管理費」も含まれるため、技能実習生の負担額は賃金の3ヶ月分から送出し管理費を差し引いた額となります。
従来も仲介費用の上限はありましたが、あまり守られていないのが実情でした。しかし新制度では罰則が厳しくなり、どの送出し機関も厳密に守るようになっており、技能実習生の経済的負担が減ったことにより、技能実習への希望者が増加しました。
これからもベトナム人技能実習生を受け入れるために
ベトナムの状況は常に変化していますが、今後もベトナムから技能実習生を受け入れるためには、何をすればよいのでしょうか。
給与設定が大事
一番重要となるのが賃金設定です。提示する給与が低ければ、募集が難しくなってしまいます。
ベトナムの技能実習生が希望する月の手取り額は、工場系の職種で1,000ドル(約15万円)、建設業や農業などでは1,200ドル(約18万円)とされています。
必ずしもこの希望通りの設定にする必要はありませんが、エヌ・ビー・シー協同組合では、基本給で手取り12万円以上に設定したうえで、ある程度の残業時間を確保していただくようお願いをしています。
まとめ
2024年6月のデータでは、在日ベトナム人全体の数は600,348人で、中国に次いで2位となっています。既に韓国を抜いていることを考えると、その多さがお判りいただけるのではないでしょうか。
今後、特定技能労働者を受け入れようとお考えの企業様の場合、国内で募集する場合はその母数の多さからベトナム人を受け入れる可能性が高くなるでしょう。
会社としてベトナム人の雇用に慣れておくために、まずは監理団体のサポートが手厚い技能実習生の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
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ベトナムは長きにわたって「技能実習生送出人数第1位」に輝いていますが、コロナ禍以降は募集が難しくなることもありました。2024年現在は状況が変化し、少しずつ募集が出来るようになっています。 状況が様々変化するなかで、実習生の国籍をベトナムにするか、他の国にするか、迷われる方もいるかもしれません。エヌ・ビー・シー協同組合は常に最新の情報を基に最適のご提案をいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。