今回は、わたしたちの食卓を毎日のように彩っている、技能実習2号移行対象職種である「ハム・ソーセージ・ベーコン製造職種」に
フォーカスします。
くん製製品とは
くん製の歴史はかなり古く、はじまったのは今から10000年前とも12000年前ともいわれています。
洞窟で人類が暮らしていた頃、洞窟内に吊り下げていた干し肉や干し魚に焚き火の煙があたり、その食材が腐らずに残っていたことが、
保存食としてのくん製の始まりだといわれています。
この頃のくん製はまだまだ原始的で味を楽しむものではなかったようですが、2000年ほど前のヨーロッパでは「塩漬けの保存法」と
合わさった、現在のくん製の原型ともいえるものがおこなわれていたようです。
その後、スパイスやハーブの発見により臭みが消え味わいが深くなることで、保存のためだけではなく味や風味を楽しむものとしての
「くん製製品」となっていきました。
01 【製品分類】ハム・ベーコンについて
移行対象職種である「ハム・ソーセージ・ベーコン製造職種」にふれる前に、製品としてのハム・ソーセージ・ベーコンを深堀りしてみます。
ハム・ソーセージ・ベーコンは全て、くん製することで長期保存することが可能になったものですが、肉を整形して作成する
「ハム・ベーコン」、肉をひき肉状にしてから作成する「ソーセージ」でわけて見ていきましょう。
01-01 【製品分類】ハム
ハムは英語で「豚のもも肉」を意味します。
その言葉通り、ハムは主に豚のロース肉や豚もも肉を整形して作られます。
01-02 ハムの製造工程
豚のロース肉やもも肉などを整形し、食塩や発色剤を加え塩せきします。
ケーシングに肉を充填してくん製、加熱等の加工をし、加熱したハムを冷蔵庫で急速冷却、その後製品ごとに整形してできあがりです。
ひとくちメモ
【塩せきってなんですか?】
塩せきとは「塩漬」と書き、ハム、ベーコン、ソーセージなどを製造する過程で「食塩」や【発色剤」「香辛料」などを混ぜたものに漬け込むことをいいます。
塩漬けすることで肉が熟成し、また塩の殺菌効果により保存性も高くなります。
加えて保水性も高くなることから食感も良くなりします。
01-03 【製品分類】ベーコン
ベーコンは英語で「ばら肉」を意味する通り、主に豚のばら肉を使用します。
豚バラ肉や豚肩肉等を塩せきした後、ケーシングを使用せずにくん製したものがベーコンになります。
01-04 ベーコンの製造工程
原料となるバラ肉などから、加工に不適当となる余分な脂肪などを取り除き、長方形に整え、食塩や発色剤などを加えて塩せきした後、
ケーシングを使用せずにくん製します。
くん製した後に急速冷却し、衛生状態や鮮度を保つよう施した後、製品ごとに整形されます。
ひとくちメモ
【ケーシングってなんですか?】
ケーシングとは、ハム、ソーセージの外側を包む薄い膜のことです。
肉詰めをする腸のことを英語でCASINGとよぶことから、腸以外の材料を用いる場合もケーシングと総称されます。
01-05 ハムとベーコンの違い
ハムとベーコンは、使用される肉の部位が異なります。
ハムで使用されるのは主に豚のロース肉やもも肉ですが、ベーコンで使用されるのは主に豚のばら肉や肩肉になります。
また、製造方法も異なります。
一般的に、ハムは塩漬けしたあと、ケーシングしたり糸で巻いたりしてくん製させますが、ベーコンはケーシングしたり糸で巻いたり
しません。
とはいえ、中にはハムなのにケーシングをしなかったり、ベーコンでケーシングをしたりするものもあります。
調理法での最も大きな違いは、くん製後にボイル(蒸す)するかしないかということです。
ハムはくん製した後に蒸す、茹でるなどの加熱加工を施しますが、ベーコンにはくん製させた後に蒸す、茹でるなどの工程がありません。
02 【製品分類】ソーセージ・ウィンナー
続いてソーセージ・ウィンナーについてみていきましょう。
02-01 【製品分類】ソーセージ
ハム同様、ソーセージも保存食の一種です。
原料となる食肉を挽き肉にして塩せきや調味をした後、ケーシングに充てんして乾燥、くん製、加熱等の加工をしたものが
ソーセージです。
ハムやベーコンと違って原料となる肉の種類は多岐にわたり、豚、牛、羊、馬に加え、日本でもおなじみの魚肉などがあります。
02-02 ソーセージの製造工程
原料となる肉から、加工に不適当な余分な脂肪などを取り除き、小さな肉片にしチョッパー(肉挽機)で挽肉にします。
食塩、発色剤などを加え(塩せき)、冷蔵庫で熟成させた後、香辛料などを必要に応じて加え、細かく切って練り上げ、腸などの
ケーシングに詰めていきます。
その後、くん製し加熱殺菌した後、急速冷却し、衛生状態や鮮度を保つようにし、最後に製品ごとに整形していきます。
02-03 ソーセージとウィンナーの違い
ソーセージとウィンナーは、まるで別物のような呼ばれ方をすることもありますが、じつは同じものです。
「同じもの」といってしまうと語弊がありますが、ウィンナーは正式名称を「ウィンナーソーセージ」といい、ソーセージの一種です。
JAS(日本農林規格)では、ケーシングに羊の腸が使用され、太さが20mm未満のものをウィンナーソーセージとしています。
さらに、フランクフルトやボロニアもソーセージの一種です。
豚の腸がケーシングに使用され、太さが20mm以上36mm未満のものがフランクフルトソーセージ、牛の腸がケーシングに使用され、
太さが36mm以上のものがボロニアソーセージとされています。
03 技能実習2号移行対象職種としてのハム・ソーセージ・ベーコン製造職種
製品としてのハム・ソーセージ・ベーコンについて触れてきました。
それを踏まえて、技能実習におけるハム・ソーセージ・ベーコン製造職種の定義をみてみましょう。
03-01 【移行対象職種】①ハム製造作業
【①ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業のうちハム製造作業】
主として豚ロース肉や豚もも肉等の肉塊を塩せきした後、ケーシングに充てんしてくん煙、加熱等の加工をした製品(ハム類)を
製造する作業をいう。
03-02 【移行対象職種】②ソーセージ製造作業
【②ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業のうちソーセージ製造作業】
種々の原料食肉を挽き肉にして塩せきや調味をした後、ケーシングに充てんして乾燥、くん製、加熱等の加工をした製品
(ソーセージ類)を製造する作業をいう。
03-03 【移行対象職種】③ベーコン製造作業
【③ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業のうちベーコン製造作業】
主として豚ばら肉・豚肩肉等を塩せきした後、ケーシングを使用せずにくん煙した製品(ベーコン類)を製造する作業をいう。
03-04 一般的な「ハム・ソーセージ・ベーコン製造」と侮るなかれ
技能実習におけるハム・ソーセージ・ベーコン製造の定義をみると、一般的なそれとほとんど同じように見えますので、
その感覚で実習に従事すれば良い・・と安易に考えてはいけません。
たとえば、技能実習生がおこなうハム製造では「豚肉のみを使用する」と定義されているなど、しっかり作業ダイジェストに目を通す
必要があります。
技能実習2号移行対象職種:ハム・ソーセージ・ベーコン製造職種
04 まとめ
いかがでしたでしょうか。
わたしたちの食卓にならぶことの多いハム・ソーセージ・ベーコンですが、日本で活躍している技能実習生がその製造の一翼を担っています。
きっと母国に帰ったあとも、日本での経験を糧に、その国に即した美味しい食材を生み出してくれるに違いありません。
彼ら彼女らの将来の活躍を期待しつつ、わたしたちエヌ・ビー・シー協同組合は、これからも技能実習生と企業さまをしっかりサポートして
まいります。