今回は、技能実習2号移行対象職種である「鋳造(ちゅうぞう)」にフォーカスします。
01 「鋳造」とは
「鋳造」といっても、具体的にどのような作業なのかピンとこないかたもいるかもしれません。
技能実習2号への移行対象職種である「鋳造」の解説の前に、一般的な鋳造について紹介していきましょう。
01-01 鋳造製造
鋳造とは、いろいろな材料から作られた鋳型(いがた)とよばれる型枠の中に溶かした金属を流し込み、冷やして目的のカタチに加工する
製造方法のことです。
できあがったものを鋳物(いもの)といい、身近な例でいえば、鉄でできた茶釜だとか、お寺の釣り鐘などが鋳造で作られた鋳物になります。
01-02 鋳造の特徴
鋳造の特徴として、
・製造物の形状、大きさの自由度が高い。
・ほとんどの金属に適用できる。
・大量生産が可能。
以上のようなものが挙げられます。
01-03 鋳物の製品例
鋳造で製造された鋳物の主な製品例は以下の通りです。
主な製品例
・お寺の釣り鐘(梵鐘)、道路のマンホール、鉄瓶、自動車のホイール、ドアノブ ・・など
歴史の授業で、「奈良の大仏は鋳造の製法で作られた」と習った方もいるかもしれません。
01-04 鋳造の歴史
奈良の大仏の話題がでましたので、鋳造の歴史を少し振り返ってみましょう。
鋳造の歴史はかなり古く、紀元前3000年ころのメソポタミア文明ではすでにおこなわれていたそうです。
メソポタミア文明はチグリス・ユーフラテス川の沖積平野に栄えた文明ですが、上流が銅鉱石の産地だったことも
関係するかもしれません。
近代になって、蒸気エンジンを利用した高炉での製鉄に成功したことで、産業革命に拍車がかかったといいます。
日本では、富山県高岡市と埼玉県川口市が特に有名で、富山県高岡市には旧南部鋳造所のキューポラと呼ばれる溶解炉が現存しています。
また、鋳造が盛んだった埼玉県川口市は映画「キューポラのある街」の舞台となり、キューポラをモチーフとした「きゅぽらん」という
キャラクターもいるそうです。
02 技能実習移行対象職種「鋳造」
鋳造を簡単にご案内したところで、続いて技能実習の移行対象職種である「鋳造」について解説してきます。
02-01 「鋳造」
技能実習2号への移行対象職種である「鋳造」では、
以上の2つの作業で受け入れが可能です。
02-02 『鋳鉄鋳物鋳造作業』
『鋳鉄鋳物鋳造作業』は以下のように定義されています。
『鋳鉄鋳物鋳造作業』
鋳鉄を溶かして鋳型に注ぎ込み、冷えて固まった後で鋳型から取り出し、目的に応じた製品に仕上げる作業をいう。
02-03 『非鉄金属鋳物鋳造作業』
もう一つの作業である『非鉄金属鋳物鋳造作業』は以下のように定義されています。
『非鉄金属鋳物鋳造作業』
銅及び銅合金、アルミニウムとアルミニウム合金及びマグネシウムとマグネシウム合金等を溶かして鋳型に注ぎ込み、冷えて
固まった後で鋳型から取り出し、目的に応じた製品に仕上げる作業をいう。
2つの作業の違いは、「鉄を扱うか、非鉄金属を扱うか」になります。
両方を扱っている企業さまも多いと思いますが、主作業がどちらになるのか考慮する必要があります。
02-04 「鋳造製造」の必須作業
「鋳鉄鋳物鋳造作業」と「非鉄金属鋳物鋳造作業」の必須作業は、扱う金属が違うため若干の違いがあります。
詳しくは以下の資料をご確認ください。
必須作業は、年間作業の50%以上従事する必要があります。
02-05 「鋳造製造」の必要設備
必要設備は両作業共通となります。
1. 各種鋳造用手工具(けがき、ぽんち、たがね、ハンマ、へら類、こて(鏝)類、スタンプ及び突き棒類、はけ及び筆類、
ふるい類等)
2. 各種測定用器工具(スコヤ、定盤、定規、鋳物尺、ノギス等) 他
02-06 関連作業・周辺作業
必須作業である鋳造作業のほか、関連作業・周辺作業として以下の項目は作業可能です。
関連作業(作業全体の30%以下)
・鉄or非鉄金属(必須作業でない)鋳物鋳造作業
・合金溶解炉等の操作作業
・機械加工作業(鋳造に関する機械加工のみ)
・後加工(ばり取り、穴あけ、研磨等)作業
・検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、内外部欠陥等)作業 ・・・など
周辺業務(作業全体の20%以下)
・原材料等の運搬作業(工場内)
・加工部品及び製品の組み立て作業
・製品(部品)の梱包、出荷作業 ・・・など
03 鋳造業界の現状
日本鋳造協会によりますと、従業員30名未満の小規模事業者が7割以上を占めるそうです。
技術の継承のために、業界をあげて技能実習生の生活サポートがおこなわれており、今後も実習生の活躍が期待されています。
一般社団法人日本鋳造協会「外国人材の受入に向けた 日本鋳造協会の取組について」
エヌ・ビー・シー協同組合は、製造業の組合員さまが多くを占めています。
業界の活性化のためにも、これからも変わらぬ誠実さでサポートしてまいります。