2027年4月からスタートする「育成就労制度」において、受入れ企業が最も注視すべき変更点の一つが「日本語能力要件の厳格化」です。
これまでの技能実習制度では、日本語教育はあくまで努力義務の側面が強くありましたが、新制度では「3年間で特定技能1号水準へ育てる」ことが法的義務となります。特に、本人意向による転籍(転職)の条件として「A2.1相当(N4手前)」が新設されるなど、日本語能力の合否が人材の定着や流動性に直結する仕組みへと変わります。
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新制度「育成就労」とは?制度の内容と技能実習制度との違いを詳しく解説
本記事では、育成就労制度における日本語能力要件の全体像と、受入れ企業が今すぐ押さえるべき変更点を整理します。制度対応をスムーズに進めるための実務ポイントとしてご活用ください。
育成就労制度の日本語能力要件を整理
- この資料でわかること
- ・分野別・段階別の「日本語要件」早見表
- ・入国時の能力による「講習時間と費用」の比較
- ・分野別(介護・自動車運送業・鉄道)上乗せ要件の全体像
- ・「登録日本語教員」の確保と外部連携の進め方
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日本語能力が「育成の成否」を分ける理由
育成就労制度が技能実習制度と根本的に異なる点はどこか。一言でいえば、「育成」を法的義務として明文化したことです。従来の技能実習制度では、日本語教育はあくまでも努力義務でした。実態として、企業ごとに対応がばらつき、教育の質は問われませんでした。
育成就労では、その前提が変わります。制度のゴールは「3年間で特定技能1号水準に到達できる人材を計画的に育てること」。技能と日本語の両面で、段階ごとに達成すべき基準が法律で定められています。
日本語能力要件が特に重要なのは、試験の合否が在留資格そのものに直結するからです。不合格が続けば、転籍制限や在留更新への影響が生じる可能性があります。受入れ企業にとって、日本語教育はもはや制度運用の根幹です。
※本記事で使用する日本語能力レベルの表記について 「A1」「A2.1」「A2.2」「B1」は、JFT-BASIC(国際交流基金日本語基礎テスト)が採用するCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の区分です。括弧内の「N4」「N3」などはJLPT(日本語能力試験)の対応級を示しています。両者は別の試験ですが、おおよその難易度の目安として対照させています。なお、A2.1はJFT-BASICにおいて今回新たに設けられた中間レベルです。現時点では暫定的な運用区分であり、今後変更される可能性があります。
段階別・日本語能力の目標設定
育成就労では、在留期間を通じて日本語能力を段階的に引き上げることが義務となります。各ステージの到達目標は以下の通りです。
入国前(就労開始前)
A1相当(N5程度)以上の試験に合格するか、相当する講習を修了していることが条件です。
1年経過時
A1(N5程度)への到達を確認したうえで、A2.2(N4程度)に向けた学習の進展が求められます。介護・鉄道など一部分野では、この時点でA2.2相当(N4程度)以上が必要です。
転籍時(本人意向による転籍)
今回新設されたA2.1が最低ラインとなります。A2.1はA1とA2.2の中間に位置する新しい区分で、転籍の可否を左右する基準として設けられました。このレベルに達していない場合、本人が希望しても転籍が制限される可能性があります。受入れ側・送出側ともに認識しておく必要があります。
育成就労終了(特定技能1号への移行)
A2.2相当(N4程度)以上。日常的な場面の日本語をある程度理解できる水準です。鉄道分野に限り、B1相当(N3程度)が必要となります。
特定技能2号への移行
B1相当(N3程度)以上。日常会話をこなせるレベルが求められます。
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介護・自動車運送業・鉄道の上乗せ要件
標準的な分野と比べ、特定の産業分野では入国直後から高い日本語水準が求められます。受入れ企業は自社の属する分野の要件を事前に正確に把握しておく必要があります。
介護分野
入国時点で原則B1相当(N3程度)以上が求められます。「介護日本語評価試験」の合格も必須です。育成就労終了時にはB1相当(N3程度)が要件となります(通常分野はA2.2)。
自動車運送業(バス・タクシー等)
1年経過時点でA2.2相当(N4程度)以上が必要です(通常分野はA1)。
緩和措置①:A2.2相当(N4程度)であれば、日本語サポーターの同乗を条件に乗務可能。 緩和措置②:離島・半島のバス路線ではA2.2相当(N4程度)での単独乗務が認められる場合あり。 B1未到達の場合は個人別学習プランの提出が義務となります。
鉄道(運輸係員)
入国直後からA2.2相当(N4程度)以上が必要(通常分野はA1)。特定技能1号移行時にはB1相当(N3程度)が必須。B1未到達の場合は学習プランの提出が必要です。
入国時の能力で変わる「講習時間とコスト」
入国時点での日本語力によって、必要な講習時間が大きく変わります。受入れコストや受講体制の設計に直結するため、採用計画の段階から把握しておくことが重要です。
入国時能力別・講習時間の比較
A2.2相当(N4程度)以上合格者:合計110時間(入国後講習110時間のみ)
A1相当(N5程度)合格者:合計260時間(入国後160時間+育成期間中100時間)
試験未合格者:合計320時間(入国前110時間+入国後110時間+育成期間中100時間)
留意事項
育成期間中の100時間は、認定日本語教育機関の就労課程での履修が原則です(当面の経過措置として、登録日本語教員による授業での代替も認められます)。この100時間を労働時間として扱うかどうかは、実施形態に応じた個別判断となります。
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登録日本語教員・認定日本語教育機関の確保が必須になる理由
育成就労では、日本語教育の「量」だけでなく「質」も問われます。ここで登場するのが「登録日本語教員」と「認定日本語教育機関」という二つのキーワードです。
登録日本語教員とは
2024年に施行された「日本語教育の適正かつ持続的な発展に関する法律」に基づいて設けられた国家資格です。日本語教育に関する一定の専門知識と指導能力を有することが、国によって証明されています。これまで日本語教師に国家資格は存在せず、誰でも教えられる状況でしたが、この資格の創設により、教育の質の担保が制度として求められるようになりました。
認定日本語教育機関とは
文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関のことです。カリキュラムや教員配置などについて一定の基準を満たしていることが審査されており、育成就労制度においては、育成期間中に義務づけられる100時間の日本語教育は、原則としてこうした認定機関が設置する「就労のための課程」で行うことが求められます。
原則:認定日本語教育機関での100時間履修
育成就労計画の認定を受けるには、認定機関が設置する「就労のための課程」において100時間以上の授業を受けさせることが条件です。
- ・1クラス20人以下の少人数制
- ・対面または双方向オンラインなど適切な方法
- ・登録日本語教員の資格保有が証明できること
経過措置:登録日本語教員による代替
当面の経過措置として、登録日本語教員が授業を行う場合は、認定機関での履修とみなされます。認定機関との連携か、教員の確保か、いずれにしても、2027年4月の施行に向けた準備は早いほど選択肢が広がります。
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2027年4月までに整えるべき5つのアクション
制度施行まで1年を切っています。準備に着手している企業との差は着実に開いています。
自社の分野別要件を確認する
介護・自動車運送業・鉄道などの上乗せ要件は、標準分野と内容が大きく異なります。自社が属する分野の要件を正確に把握し、受入れ計画に反映させてください。
段階別の社内評価基準をつくる
入国前(A1)→1年経過時(A2.1)→転籍時(A2.1)→終了時(A2.2)→特定技能2号(B1)という各段階に対応した社内評価基準を明文化してください。
講習の時間割・予算・体制を具体化する
入国前・入国後の講習に加え、育成期間中に新たに義務化される100時間をどう確保するか。時間割・費用・担当者のアサインまで落とし込んでください。
認定機関との連携か、教員確保かを決める
近隣の認定日本語教育機関と連携協定を締結するか、社内または外部委託で登録日本語教員(1クラス20人以下)を確保するか。早期に方針を決めることで選択肢が広がります。
個人別の日本語学習プランを整備する
介護・自動車運送業など、B1未到達の場合に入管庁への提出が義務となる分野では、個人別の学習プランを事前にフォーマット化しておくことで実運用の負担を減らせます。
制度対応は、準備した企業が有利になります。エヌ・ビー・シー協同組合では、育成就労制度への移行をサポートする無料ホワイトペーパーをご用意しています。自社の受入れ体制を点検する出発点として、ぜひご活用ください。
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