介護業界は、2025年までに毎年5万人以上の介護職員が不足するといわれていますが、介護人材確保のために外国人材の活用を視野にいれている事業所も多いのではないでしょうか。
介護が技能実習に追加されたのは2017年で、他の職種に比べると新しい職種ですが、令和3年度の統計では介護職種の認定件数が8,384件で技能実習全体の4.9%、職種別で第5位となっており、今後ますます増えると予想されています。
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しかし、介護職種には固有の要件があり、他の職種の技能実習と比べると制度が複雑ともいわれています。
本記事では、介護技能実習についての固有要件や技能実習評価試験について分かりやすく解説いたします。
また介護技能実習生の受入れのメリットとデメリットについても解説していきます。
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01 外国人技能実習制度
介護技能実習について掘り下げる前に、外国人技能実習制度について改めて振り返ってみましょう。
外国人技能実習制度は1993年に創設され、様々な制度改正を経て現在に至っています。
制度の概要
外国人技能実習制度とは、日本の企業が外国人を受け入れ、日本の技術や技能を移転する制度です。
1993年に創設され、2022年現在は約34万人の外国人技能実習生が日本に在留しています。
技能実習生は、3年から5年間日本で技能を習得し、母国でその技術を活かして経済発展に貢献することが期待されています。
受入れの方式
技能実習生の受入れ方式は「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。
「企業単独型」は海外に支店や取引先がある企業に限られ、ほとんどの企業では監理団体を通じて受入れる「団体監理型」で技能実習生の受入れを行っています。
介護職種に関しては、令和3年の認定件数8,384件のうち「企業単独型」は15件のみで、あとは全て「団体監理型」での受入れとなっています。
技能実習生の在留資格
技能実習生の在留資格は「技能実習」で、在籍期間により「技能実習1号」「技能実習2号」と変わっていきます。
- ・在籍1年目・・「技能実習1号」
- ・在籍2年目、3年目・・「技能実習2号」
- ・在籍4年目、5年目・・「技能実習3号」
企業単独型の場合は「技能実習第1号イ」、監理団体型の場合は「技能実習第2号ロ」と、受入れ方式によって後ろに付く仮名が異なります。
介護技能実習での受入れ企業の要件
介護職種では、通常の技能実習生受入れの要件に加え、介護職種の固有要件が存在します。
ここでは、介護の固有要件について解説いたします。
対象事業所および業務
介護技能実習生の受入れができる対象の事業所および業務は以下の通りです。
- ・技能実習を行う事業所で介護等の業務を行うものであること(訪問系介護は対象外)
- ・技能実習を行う事業所が、開設後3年以上経過していること
介護技能実習の対象となる事業所は、「介護」の業務が実際に行われている機関になります。
技能実習生の人権擁護、適切な在留管理の観点から、訪問系サービスは対象としないとされています。
また、経営が一定程度安定している事業所として、設立後3年を経過している事業所が対象となっています。
介護技能実習生の対象施設
児童福祉法関係の施設・事業 |
・肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの) ・児童発達支援 ・放課後等デイサービス ・障害児入所施設 ・児童発達支援センター ・保育所等訪問支援 |
障害者総合支援法関係の施設・事業 |
・短期入所 ・障害者支援施設 ・療養介護 ・生活介護 ・共同生活援助(グループホーム) ・自立訓練 ・就労移行支援 ・就労継続支援 ・福祉ホーム ・日中一時支援 ・地域活動支援センター |
老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 |
・指定認知症対応型共同生活介護 ・指定介護予防認知症対応型共同生活介護 ・介護老人保健施設 ・指定通所リハビリテーション ・指定介護予防通所リハビリテーション ・指定短期入所療養介護 ・指定介護予防短期入所療養介護 ・指定特定施設入居者生活介護 ・指定介護予防特定施設入居者生活介護 ・指定地域密着型特定施設入居者生活介護 ・第1号通所事業 ・老人デイサービスセンター ・指定通所介護(指定療養通所介護を含む) ・指定地域密着型通所介護 ・指定介護予防通所介護 ・指定認知症対応型通所介護 ・指定介護予防認知症対応型通所介護 ・老人短期入所施設 ・指定短期入所生活介護 ・指定介護予防短期入所生活介護 |
一部対象 その1 ・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・ケアハウス ・有料老人ホーム 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)、介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)、地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く。)を行う施設を対象とする。 |
一部対象 その2 ・指定小規模多機能型居宅介護 ・指定介護予防小規模多機能型居宅介護 ・指定複合型サービス 訪問系サービスに従事することは除く。 |
生活保護法関係の施設 |
・救護施設 ・更生施設 |
その他の社会福祉施設等 |
・地域福祉センター ・隣保館デイサービス事業 ・ハンセン病療養所 ・原子爆弾被爆者養護ホーム ・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 ・原子爆弾被爆者デイサービス事業 ・原子爆弾被爆者ショートステイ事業 ・労災特別介護施設 |
病院又は診療所 |
・病院 ・診療所 |
技能実習生の受入れ人数
介護技能実習生の人数枠は、「実際に施設等で介護の分野で業務にあたっている介護常勤職員数」によって、受入れ可能な基本人数枠が決まっています。
事務作業員や用務員、掃除、調理師は介護常勤職員数には含まれません。
ただし、看護師やパートタイマーでも、介護業務に携わる職員はカウントされる場合があります。
介護に従事している |
基本人数枠 |
全体 1・2号 |
301人以上 |
常勤職員数の20分の1 |
常勤職員数の20分の3 |
201~300人 |
15人 |
45人 |
120~200人 |
10人 |
30人 |
101~119人 |
10人 |
30人 |
72~100人 |
6人 |
18人 |
51~71人 |
6人 |
18人 |
41~50人 |
5人 |
15人 |
31~40人 |
4人 |
12人 |
21~30人 |
3人 |
9人 |
11~20人 |
2人 |
6人 |
3~10人 |
1人 |
3人 |
2人 |
1人 |
1人 |
1人 |
1人 |
1人 |
技能実習指導員
技能実習生を受入れる企業は、現場で技術を教える「技能実習指導員」を1名以上選任しなければなりません。
技能実習指導員の、介護職種における固有要件は以下の通りです。
- ・技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任すること
- ・技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有すること、あるいは、介護福祉士と同等以上の専門的知識及び技術を有する者(看護師等)であること
介護技能実習生に関する要件
技能実習制度には技能実習生本人に関する要件がありますが、介護技能実習生にも固有の要件が存在します。
技能実習生に求められる日本語能力
介護技能実習生は常に現場でのコミュニケーションが求められますので、日本語能力には一定の基準が設けられています。
1年目の技能実習1号は、日本語能力検定N4、あるいは同等程度の日本語試験に合格していることが条件となります。
N4は「基本的な日本語が理解できる」レベルとされており、技能実習生は基本的な日本語が理解できる状態で入国することが求められます。
技能実習2号への移行は、日本語能力検定N3(あるいは同等程度の日本語試験に合格していること)が条件となります。
N3は「日常的場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルとされており、技能実習1号は配属された1年目にN3に合格しなければなりません。
このように、介護技能実習生は高い日本語能力が求められますので、日頃から日本語でのコミュニケーションを行なう、日本語の勉強会を開催するなど、実習先でも日本語学習へのサポートが欠かせません。
技能実習生の前職要件
技能実習生は、日本で従事する業務と同等の業務を海外において従事した経験があるか、技能実習に従事することを必要とする特別な事情が求められます。
介護職種における同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)には、以下のものが該当します。
- ・ 外国における高齢者若しくは障害者の介護施設等において、高齢者又は障害者の日常生活上の世話、機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
- ・ 外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
- ・ 外国政府による介護士認定等を受けた者
入国前講習と入国後講習
技能実習生は入国前と入国後に一定期間、座学の講習を受講しますが、一般の技能実習生の場合は入国前に1か月以上の期間かつ160時間以上の講習を受講すれば、入国後の講習期間は1か月になります。
介護職種の技能実習生の場合、入国後講習は一般的な技能講習制度のルールに加え、「介護講習42時間」および「日本語講習を240時間」行わなければならないと規定されています。
ただし、介護実習生がN3(日本語検定能力3級)の資格を所持していれば「日本語講習は80時間」でよいというルールがあり、技能実習生の日本語能力によっては1ヶ月間の講習で済むケースもあります。
講習内容 |
|
日本語学習 |
240時間 |
介護導入講習 |
42時間 |
法的保護等に必要な情報 |
8時間 |
生活一般等 |
適宜 |
合計 |
290~320時間 |
介護技能実習評価試験
技能実習は技術の移転を目的とされているため、その修得状況を測るための試験が存在します。
技能実習生の目標は、その試験に合格することとされています。
介護職種においては、一般社団法人シルバーサービス振興会が開催する「介護技能実習評価試験」を受験し、合格することが目標になります。
初級、専門級、上級の3種類があり、それぞれ技能実習1号、技能実習2号、技能実習3号の、在留資格変更時や実習修了時に受験します。
試験範囲
介護技能実習評価試験の試験範囲は、一般社団法人シルバーサービス振興会のホームページにて公開されています。
目標レベル
区分 | 内容 |
初級 | 指示のもとであれば、決められた手順などに従って、基本的な介護を実践できるレベル |
専門級 | 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル |
上級 | 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できるレベル |
試験内容
区分 | 学科試験 | 実技試験 | |||
必須 / 任意 | 出題形式 | 時間 | 必須 / 任意 | 時間 | |
初級 | 必須 | 真偽法20問 | 60分 | 必須 | 60分 |
専門職 | (任意) | 真偽法30問 | |||
上級 | 多岐選択法50問 | 90分 |
合格基準
項目 | 内容 |
学科試験 | 得点合計が満点の65%以上 |
実技試験 |
次の全てを満たす場合
|
試験時期
試験は随時開催されています。
各等級の試験には受検資格があり、一定期間の実務経験の後に受験が可能となっています。
項目 | 内容 |
初級試験 | 技能実習制度の介護職種に関し、6ヶ月以上の実務の経験※を有する者 |
専門級試験 | 技能実習制度の介護職種に関し、24ヶ月以上の実務の経験※を有する者 |
上級試験 | 技能実習制度の介護職種に関し、48ヶ月以上の実務経験※を有する者 |
※入国後講習の期間を含めません
介護職種が人手不足である理由
厚生労働省の発表によると、2025年度までは毎年5万人以上の介護人材が不足するとされています。
2025年が人手不足のピークといわれていますが、それ以降も2040年までは毎年3万人以上の人材不足が予想されています。
なぜ、介護業界ではこれほどまでに深刻な人手不足が起こっているのでしょうか。
高齢化問題
介護人材が不足している最も大きな要因は、高齢化問題です。
令和3年10月1日現在、日本の総人口は1億2,550万人ですが、そのうち65歳以上人口は3,621万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は28.9%となっています。
2025年には「団塊世代」が75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会になる、いわゆる「2025年問題」が発生します。
要介護者は増え続け、介護人材は不足し続ける状態が続くため、外国人材の活躍が不可欠とされています。
介護技能実習生を受け入れるメリットとデメリット
外国人材の受入れが不可欠といわれている介護分野ですが、技能実習生を受入れにはメリットだけでなくデメリットもあります。
受入れ前に確認しておきましょう。
介護技能実習生を受け入れるメリット
厚生労働省が2020年に行った調査によると、「技能実習生を受け入れてよかったと思うこと」のトップ5は以下の通りでした。
- 「技能実習生の働く様子を見ることで、日本人職員の仕事に対する意識が高まった」
- 「日本人職員の異文化理解が深まった」
- 「利用者が技能実習生との交流を喜んでいる」
- 「日本人職員の指導力が伸びた」
- 「受入れを機に介護業務の再確認を行ったことで、業務内容や手順等の標準化を図ることができた」
【厚生労働省:受入事業所のための介護技能実習生キャリア支援ガイド2022】
技能実習生は実習への意欲が非常に高く、その姿勢を受けて日本人従業員の仕事への意欲が高まるというのは、介護職種に限らず技能実習生を受入れた際に良く起こるメリットとなります。
また介護職種独自の「利用者が技能実習生との交流を喜んでいる」という項目は、コミュニケーションが必要な看護の現場において、見逃せない非常に大きな良い影響といえるでしょう。
さらに、技能実習生を指導することで日本人の指導力がアップすること、効率よく技能実習生を育成するために業務の棚卸をしたことで、業務全体の効率化を図るきっかけが生まれるといったことも、技能実習生受入れが及ぼすメリットだといえます。
その他に挙げられた介護実習生受入れのメリットは、「雇用が安定する」ということです。
技能実習生の送出し国では介護実習に人気があり、募集すると希望者が大勢集まります。
求人を出せば必ずといっていいほど応募がありますので、募集が難しいとされる介護業界において、安定した受入れができることは大きなメリットといえるでしょう。
介護技能実習生を受入れたときのデメリット
介護技能実習生の受入れのデメリットは以下の4つです。
一つ目は、受入れ当初は日本語でのコミュニケーションに苦労する可能性があることです。
「N4相当の日本語力」が要件にはなっていますが、全員が日本語で流暢にコミュニケーションが取れるわけではありません。
二つ目は、期限が決められており長期雇用が難しいことです。
現状の制度では、技能実習生としての在籍期間は基本的に3年間です。
技能実習生3号として2年間、特定技能に移行すればさらに5年間の延長が可能ですが、それ以上となると現行の制度では難しくなっています。
三つ目は、配属までの期間が長いということです。
介護技能実習は面接から配属まで10ヵ月以上の期間がかかります。
介護の講習を受けなければならないことから、他の職種よりも配属に時間がかかります。
受入れの準備から考えると約1年かかりますので、その時間を逆算して受入れ計画を立てる必要があります。
四つ目は、受入れにコストがかかることです。
ハローワークなどからの募集とは異なり、技能実習生の受入れには、入国前の費用と入国後の月額費用が発生します。
場合によっては日本人従業員の採用よりもコストがかかることもありますので、これもデメリットの一つといえるでしょう。
まとめ
技能実習の介護職種について詳しく解説してまいりました。
日本は今後も高齢化が進み、介護人材の需要は増え続けると予想されています。
そんな介護の現場において、技能実習生を受け入れることには様々なメリットがあり、職場に活気をもたらす存在となってくれるでしょう。
技能実習生を受け入れる際には、正しい知識や万全な監理支援実績のある団体を選ぶことが重要です。
エヌ・ビー・シー協同組合では、介護現場の皆様と協力し、多くの方に喜ばれるサポートを心掛けています。
介護技能実習生の受入れの流れ、要件、評価試験などがよくわかる資料を用意しましたので、受入れ前にぜひご確認ください。