2022年8月31日に「日本の技能実習制度は外国人にまだ魅力があるのか」というテーマでオンラインセミナーを開催いたしました。
今回は、その時の内容を一部加筆修正してお伝えいたします。
01 オンラインセミナー「日本の技能実習制度は外国人にまだ魅力があるのか」
02 在留外国人の人数が減少
在留外国人の数は外国人の数は令和元年から2年連続で減少しています。
新型コロナウイルスの影響があるのは確かですが、要因はそれだけでしょうか?
在留資格別にみていくと「技能実習」は令和2年末が378,200人、令和3年末には276,123人と、前年度比27%減となっており、他の在留資格よりも大幅に減少しています。
令和3年末に274,740人と、技能実習に近い在留人数だった「技術・人文知識・国際業務」は、令和2年末が28,380人と前年度比3%減ですので、技能実習生の減少が大きいことがわかります。
日本の技能実習制度が、送り出し諸国にとって魅力がなくなっているとも考えられそうです。
実際はどうなのでしょうか。
03 他国との比較
海外には技能実習のような制度はなく、「労働者」として受入れることになります。
03-01 他国では派遣労働
例えばシンガポールでは介護人材が不足しており、派遣労働者として外国人を受入れていますが、約一ヶ月の研修期間が終われば就労可能で、仕事の内容も限定されることはなく、単純労働も可能となっています。
技能実習制度における介護職種と比較すると、日本語能力はN4が必須とされており、また日本にやってくる前に母国で半年以上の日本語教育が必要とされています。
そして労働力ではなく人材育成を目的として受入れますので、単純労働はできません。
他国での派遣労働の場合、完全に労働力として受入れられますので、保障も最低限のものとなっています。
派遣先がいわゆるブラック企業のようなところだった場合、最低賃金以下で働くようなケースもあるようです。
03-02 日本は技能実習制度
技能実習の場合、作業の範囲が限定されるところはありますが、人材育成を目的とした制度のため非常に守られているといえます。
研修制度など過去の悪い歴史もあるため、なおさら厳しく監査がおこなわれており、保障もしっかりおこなわれています。
制度が違うため単純な比較は出来ませんが、実習生の減少との関係はあまり無さそうに見えます。
04 技能実習生インタビュー
実際に日本で実習を行ってる技能実習生4人にインタビューをしてきましたので、その様子をご覧ください。
質問の内容は、「技能実習制度への感想」「円安についての感想」の2点です。
04-01 実習生インタビュー①「技能実習制度への感想」
- 中国人実習生
- 「技能実習は職種変更できないので、特定技能になって他の職種にチャレンジしたい」
- ベトナム人実習生
- 「日本人と外国人の扱いは平等ではないと感じている」
- カンボジア人
- 「実習指導員の役割が明確なので、助かっている」
- ミャンマー人
- 「配属して2~3か月なので、わからないことも多いが、責任者・生活指導員がしっかり面倒を見てくれて助かった」
制度に関する感想は、概ね良好といえそうです。
日本人と外国人の扱いの違いは、制度というより社内の状況にあるのかもしれませんので、今後もしっかりとしたサポートが必要ですね。
04-02 実習生インタビュー②「円安へ感想」
- 中国人実習生
- 「円安なので、中国元に変えるとお金が減ってしまう。今は送金せずに、貯めている」
- ベトナム人実習生
- 「以前の送金は収入の5割で十分だった。いまはもっと増やさないと足りない」
- カンボジア人実習生
- 「カンボジアの物価が上がっている。円安で、手取りの8割くらい送らないといけない」
- ミャンマー人実習生
- 「入国したばかりだが、月に7万円くらい送金しようと考えている」
円安になり、為替レートの関係で苦労しているのがうかがえます。
円安問題は解決できませんが、賃金設定を上手におこなうことで、実習生のやる気もあがっていきます。
05 賃金設定が大事
技能実習生として来日する魅力を持たせるためにも、受け入れた実習生のモチベーションアップのためにも、賃金設定は非常に大切です。
実習生の賃金は、法律上最低賃金でも構いませんし、賞与なしでも構いません。
しかし、ルール上問題ないから最低賃金や賞与なしの設定では、日本人同様やる気がもちません。
計画的な賞与・昇給をおこなうことが大切です。
05-01 賞与・昇給のタイミング
賞与・昇給のタイミングのひとつに、「リーダーとして後輩の指導を期待するとき」があげられます。
配属後間もない時は言葉や仕事を覚えることで精一杯かもしれませんが、2年目・3年目になると後輩の実習生も配属され、指導をおこなう場面もでてきます。
そのタイミングで昇給や賞与を行うことで、先輩としての自覚もでき、リーダーとしての責任感も湧き、実習の現場でさらに活躍してくれることでしょう。
技能実習3号として2年、さらに特定技能として長期的な実習生の活躍を期待されている企業さまは、計画的に昇給・賞与を行うことで実習生も今後の目標が明確になり、3号に向けて努力しやすくなります。
賃金設定についてのさらに詳しい内容は、エヌ・ビー・シー協同組合のebookをぜひご確認ください。
【無料ebook:企業が理解を高めるべき賃金設定ガイド】
「技能実習制度は技術の移管を目的とした国際貢献の制度である」ということは周知の事実ですが、来日した技能実習生は配属先企業と雇用契約を結び、日々行う実習には賃金が発生します。技能実習生も、母国でおこなっていた業務のさらなる技術向上を目指して日本にやってきますが、母国と日本との貨幣価値の違いにより、実習の対価としての賃金にも意味を感じています。対価としてだけでなく自分への評価と捉えれば、その数字に対してよりシビアに考えることでしょう。労基法の側面からの給与について、また有益な技能実習にするための給与設定など、ポイントを押さえてご説明しました。
06 最後に
今回は、技能実習生に実際にインタビューをおこない、その模様をご覧いただきました。
動画ではその模様はありませんでしたが、日本の魅力はお金だけではないという意見が多くありました。
日本の文化や働き方に憧れがあり、そこに魅力を感じて日本にやってくる外国人はたくさんいます。
円安問題は存在しますが、それ以外の魅力を感じて日本にやってくる技能実習生も多くいます。
実習生が長く日本で活躍できるように、わたしたち監理団体はこれからもしっかりサポートしてまいります。
07 次回セミナーの予定
次回のセミナーは「ミャンマーからはどんな実習生がくるの?」というテーマで9月28日に開催いたします。
ミャンマーの送り出し機関でいろいろなお話をうかがってきましたので、ぜひご参加ください。