2023年8月30日(水)、エヌ・ビー・シー協同組合主催のセミナー「特定技能VS技能実習【徹底比較】」を開催いたしました。 ご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
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本記事では、「特定技能VS技能実習【徹底比較】」をレポートします。
「特定技能制度が注目を集める理由」「特定技能と技能実習のメリット・デメリット」「企業がどちらの制度を採用すべきか」など、当日解説した内容をお届けいたします。
セミナー講師紹介
ウー リッティー
国際事業部スタッフ
カンボジア・プノンペン市出身、日本での生活歴は9年。NUM経営大学を卒業後、イベント運営会社を経営し、ラジオ番組のプロデューサーおよび司会者として活動。2018年にはエヌ・ビー・シー協同組合に入社、100社以上の受け入れ企業と技能実習生のサポート業務に従事。現在は、ウェビナーや動画を通じて技能実習と特定技能に関する情報を発信中。
01 特定技能、技能実習の現状
近年、特定技能が注目を集めており、当組合にも特定技能に関するお問い合わせが増えてまいりました。
2022年末のデータによると特定技能の人数は130,915人で、前年度から300%も増加しました。対して技能実習は2019年にはピークとなる410,972人だったものの、新型コロナウイルスによる入国制限により、2021年は2011年以来10年ぶりとなる減少に転じました。
入国制限が解除されてからは技能実習生も増加傾向にありますが、増加率を比較すると、やはり特定技能への注目度の高さが目立ちます。
02 特定技能が増加した理由
特定技能の人数がここまで増加した理由は、新型コロナウィルス感染症による渡航制限が大きく関わっています。
入国予定だった技能実習生が母国で足止めされたことに加えて、技能実習を満了したものの帰国できない技能実習生も大勢いました。彼らは特定活動に切り替えることで在留期間を延長しましたが、その延長期間を利用することで、これまで注目を集めていなかった特定技能が、技能実習満了後の選択肢に上がるようになったのです。
加えて、当初は制約の多かった特定技能への移行プロセスが整備され、技能実習から特定技能への移行がスムーズにできるようになったことで、特定技能の増加に拍車がかかりました。
特定技能として就労する外国人が増え、それまであまり知られていなかった特定技能という制度も一般的になりました。特定技能2号の分野も追加され、技能実習制度廃止のニュースも流れる今は、さらに特定技能に追い風が吹いている状況といえるかもしれません。
03 各制度のメリット・デメリット
ここからは、技能実習、特定技能それぞれのメリット、デメリットを見ていきましょう。
03-01 技能実習制度のメリット
技能実習制度のメリットは大きく分けて以下の4つです。
- ・人材確保が比較的容易
- ・計画的な受入れが可能
- ・国籍や性別など希望する条件で募集可能
- ・基本的に3年間は同じ企業で就労を続ける
事前に人員計画をしっかり立て、長期計画で運用していくのに適しているといえます。
03-02 技能実習制度のデメリット
対して、デメリットとしてあげられるのは以下の3点です。
- ・配属までに時間がかかる(最短でも7カ月)
- ・実習内容の教育に時間がかかる
- ・日本語の習得に時間がかかる
共通しているのは「時間がかかる」ということです。
日本での生活を通じて技能を修得し日本語を習得するという制度である以上、「時間がかかる」ということは、ある意味仕方がないことかもしれません。
03-03 特定技能のメリット
それでは特定技能のメリットをみてみましょう。
- ・日本語力が比較的優れている
- ・就労経験があり、即戦力として期待できる可能性がある
日本語でのコミュニケーションもある程度可能で、受入れ後もすぐに戦力として計算できる可能性がある、というのが特定技能のメリットです。
03-04 特定技能のデメリット
特定技能のデメリットは以下の4点です。
- ・候補者の母数が少なく、人員の確保が比較的難しい
- ・海外開催の試験が限定的
- ・国内転籍の場合、配属時期を見通すことが難しい
- ・すぐに辞めてしまう可能性がある
制度が成熟途上であるため仕方がない部分もありますが、綿密に計画を立て、その計画に沿って定期的に特定技能人材を受け入れ続けることは、まだ難しい状況といえます。
こうやって二つの制度を比較してみると、それぞれのメリット・デメリットが、まるで鏡写しになっているようにも感じられますね。
04 それぞれの制度に適した企業
これまで紹介した技能実習、特定技能のメリット・デメリットを踏まえて、どういった企業に技能実習制度が向いているか、どのような企業に特定技能が適しているのか解説していきます。
04-01 技能実習に適した企業
中長期的な人員計画があり、教育制度の確立が可能な企業は技能実習制度が適しているといえます。
茨城県のとある食品加工の企業様では、大型の受注が決まり人材の確保が必要となっていました。
エヌ・ビー・シー協同組合に問い合せをいただいた当初は特定技能で人材を募集していましたが、その企業様は「定期的な人員の確保」を希望しており、また「社内教育システムの見直しへの着手」を決断されたことから技能実習制度を導入することになりました。
その後予定通り10名の技能実習生が配属され、社内教育も成功したことから翌年にも10名の技能実習生を受け入れました。
技能実習の特性を活かした成功例といえます。
04-02 特定技能に適した企業
特定技能が適した企業は、即戦力の人材が必要な企業です。また、状況に応じて柔軟な雇用計画が可能な企業も特定技能が適しているといえます。
エヌ・ビー・シー協同組合にお話をいただいた千葉県のビルクリーニングの企業様では、将来的には定期的な外国人材の受入れを視野にいれているものの、その計画は今すぐといったものではありませんでした。
外国人材育成のノウハウも無いため、即戦力となる特定技能人材を受け入れることになりましたが、なかなか簡単には人材は見つからず、結果的にひと月で予定通り3名の雇用をすることができたものの、定期的に雇用するのは難しいという結論になりました。
そのため、特定技能人材を受け入れながら社内での育成システムを整え、技能実習生を定期的に受け入れることにしました。先に雇用した特定技能人材に技能実習の教育係も担当してもらい、さらに技能実習生も満了後は特定技能として活躍してもらいたいと考えています。
国内での特定技能人材の募集は計画通りいかないことも多いため、柔軟に計画を変更できる企業の方がうまく制度を運用できるといえます。
ただ、どちらが最適という判断はなかなか難しいところですので、最終的な決断の前には信頼のおける監理団体等に相談することをおすすめします。
05 技能実習制度の今後について
技能実習と特定技能について解説してきましたが、最後に技能実習制度の今後について触れておきます。
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」において様々な提言がなされ、今年秋を目途に最終報告が取りまとめられる方向となっています。
その内容を踏まえると、技能実習制度に変わる新しい制度は、技能実習制度の良い部分を踏襲するものになると考えられています。いきなり労働力として外国人を受け入れるのではなく、まずは日本の生活様式に慣れ、技術と日本語をしっかりと習得してから労働力として活躍してもらおうといった内容なので、現在技能実習生を受け入れている企業様にとっては、それほど大きな変更はないかもしれません。
新制度の開始は2025年4月以降が予想されており、現在の制度とも数年は両立し、新制度への移行も緩やかなものになると考えられています。今、技能実習生の受入れに関して計画を見直したりする必要はありません。
06 まとめ
それぞれの制度を比較しながら解説してきました。
どちらの制度にもメリット、デメリットがあり、導入の目的と企業の状況によって適している制度が違うということもお判りいただけたかと思います。
といっても、実際に自分の会社にはどちらが向いているか、技能実習と特定技能のどちらが適しているか判断が難しいケースもあるかと思いますので、その際はお気軽にお問い合わせください。
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どちらの制度を導入するかの比較資料として社内でぜひご共有ください。