去る2024年6月14日、参議院において「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」が可決成立し、1993年より始まった技能実習制度は、「育成就労」へ移行することが正式に決まりました。
※関連情報:技能実習制度とは?
今後、新しく始まる育成就労の「制度の内容について」また「開始時期について」詳しくみていきましょう。
制度がよくわかる無料ダウンロード資料
「技能実習」と「育成就労」何が変わる?


エヌ・ビー・シー協同組合のサポート内容が分かる資料をダウンロードする
※個人情報入力の必要はありません。自動でダウンロードされます。
育成就労制定の背景
育成就労の前身となる技能実習制度は「国際貢献」を目的として運用されてきましたが、近年は人手不足に対応するために導入されるケースも見受けられ、制度の目的と実態が乖離していると指摘されることもありました。また、技術移転の観点から基本的に同じ就労先で実習を行うという点についても、外国人の権利が侵害されているという意見が寄せられることもありました。
加えて技能実習制度には、2019年に始まった特定技能制度との連続性の欠如も問題視されていました。評価試験の開催が少なかったこともあり、技能実習2号から特定技能に移行するケースが主な資格取得モデルとなっていましたが、技能実習は作業内容、特定技能は産業分類を基準とするため、制度として連携しているとはいえない状況でした。
これらを解消するために制定されたのが「人手不足解消に向けた人材確保」と「特定技能の移行に向けた人材育成」を目的とした育成就労です。
育成就労制度開始に向けたスケジュール
2024年12月17日に開催された関係閣僚会議により、今後のスケジュールが見えてきました。
2025年1月から「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」が必要に応じて開催され、そこで策定された基本方針案、分野別運用方針案をもとに関係閣僚会議が開かれ、閣議決定がなされていく予定です。
また、並行して「特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会」も開催され
- ・育成就労計画の認定基準について
- ・転籍について
- ・監理支援機関の許可基準について
- ・送出しについて
- ・特定技能制度の適正化等について
これらの事項について検討されることになっています。
今後おこなわれる有識者会議や有識者懇談会での案を元に閣議決定され、2027年中、遅くとも6月までには育成就労が始まる予定です。
技能実習生はいつまで受け入れられる?
2027年中には育成就労が始まるとされていますが、技能実習生はいつまで受入れできるのでしょうか。
技能実習生は
- ①改正法の施行日までに技能実習計画の認定を申請済み
- ②原則として施行日から3ヵ月以内に技能実習を開始
この条件に該当していれば、受入れが可能とされています。
例えば2027年4月1日に改正法が施行された場合、2027年4月1日までに技能実習計画の申請を終わらせており、2027年7月1日までに技能実習を開始できる場合は、新規入国が可能ということになります。
このタイミングで受け入れた技能実習1号は2号への移行が可能ですが、技能実習3号への移行に関しては、施行日時点に技能実習2号で在留しており、かつ今後定められる主務省令の範囲のものに限られます。
育成就労制度について
技能実習に代わって運用が始まる育成就労の、細かい内容について改めて確認していきましょう。
就労可能な職種・分野
育成就労の受入れができるのは、特定技能の受入れができる「特定産業分野」の中でも”就労を通じて技能を修得するのに相当である”と認められる「育成就労産業分野」とされています。
詳細については、今後行われる「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」において方針案が提出され、運用方針が決定される予定です。
就労期間中の転籍
技能実習と育成就労の大きな違いに、転籍の要件があります。
技能実習と同様に、就業先でのパワハラや暴力等の人権侵害を受けた時の「やむを得ない事情」がある場合の転籍が認められていますが、それに加えて「一定の要件の下」での本人の意向による転籍も認めるとされています。
その一定の要件とは
- 1、転籍先の育成就労実施者の下で従事する業務が転籍元の育成就労実施者の下で従事していた業務と同一の業務区分であること
- 2、転籍元の育成就労実施者の下で業務に従事していた期間が、育成就労産業分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められる所定の期間を超えていること
- 3、育成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること
- 4、転籍先の育成就労実施者が適切と認められる一定の要件に適合していること
とされていますが、詳細については今後主務省令等で決定される予定です。
外国人材の監理
現在、技能実習生の受入れには企業単独型と団体監理型がありますが、育成就労でも同様の形態として「単独型育成就労」と「監理型育成就労」の区分が設けられます。
技能実習制度における監理団体は「監理支援機関」となり、これまでと同様に受入れ企業様の監理支援を行うことになります。
※関連情報:監理団体とは?役割と選ぶポイントを解説
外国人材に求められる日本語能力
育成就労では就労前の時点で、日本語能力試験N5合格の日本語力が求められます。また特定技能へ移行する際にも日本語能力が求められるため、就労中の日本語学習も必須といえます。育成就労中にかかる日本語学習のコストは受入れ企業様の負担となります。
技能実習制度との違い
育成就労制度と技能実習制度の違いをまとめました。
技能実習制度 | 育成就労制度 | |
制度の目的 | 国際貢献のための人材育成 | 人手不足解消と、特定技能に向けた人材育成 |
在留期限 | 最長5年 | 最長3年 |
転籍 | 原則として不可 | 一定の要件下で可能 |
就労可能な職種・作業 | 91職種167作業(※2号移行対象職種) | 育成就労産業分野 |
受入れ人数枠 | 受入れ企業の常勤職員数に応じる | 未定(※技能実習同様に上限設定予定) |
就労前の日本語能力 | 特に規定なし(介護のみN4) | N5相当レベルが必要 |
まとめ
特定技能への移行を明確に意図して施行される育成就労は、研修制度を前身とする技能実習と違い、時代に即した制度として今後日本になくてはならない制度として運用されていくことでしょう。
今後も制度の開始まで間、新たな決定事項などありましたら皆様にお知らせいたします。
⇒新たに始まる育成就労が良く分かる資料はコチラから