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技能実習制度は、開発途上地域等への技能移転を通じての、国際協力を目的とした制度です。1993年に創設されて以来、多くの外国人材が日本で技能を学び、母国の発展に貢献してきました。

技能実習制度は2027年に育成就労制度へ移行予定ですが、改めて技能実習制度を理解し新制度との違いを知っておくことは、外国人材の受入れを検討する企業様にとって非常に意味があります。

本記事では、技能実習制度の仕組みから2027年に始まる育成就労制度との違いまで、受入れ企業様にとって重要なポイントを順を追って説明いたします。より詳しい内容は、各項目に関連する専門記事をご用意しておりますので、そちらもご覧ください。

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この資料でわかること
技能実習生の国籍の選び方
技能実習生配属までの流れ
配属から2年目、3年目への移行方法
技能実習3号と特定技能の違い
目次

技能実習制度の目的と理念

外国人技能実習制度とは、「日本が国際貢献を果たす」ことを目的として1993年に創設されました。厚生労働省は外国人技能実習制度について、以下のように解説しています。

外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。【厚生労働省:外国人技能実習制度について】

制度の根本目的は「国際協力」

技能実習制度の目的は、日本で培われた技能・技術・知識を開発途上国などに伝え、母国の経済発展に貢献できる人材を育てることです。

技能実習法では、以下の通り定められています。

技能実習の基本理念及び関係者の責務(技能実習法第3条~第6条)

【技能実習の基本理念】
技能実習は、技能等の適正な修得等のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない。技能実習は、労働力の供給の調整の手段として行われてはならない。

【国の責務】
この法律の目的を達成するため、基本理念に従って、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進しなければならない。

【実習実施者の責務】
技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について技能実習を行わせる者としての責任を自覚し、基本理念にのっとり、技能実習を行わせる環境の整備に努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。

【監理団体の責務】
技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たすとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。

【技能実習生の責務】
技能実習に専念することにより、技能等の修得等をし、本国への技能等の移転に努めなければならない。

このように、労働力の確保が目的ではないこと、技能実習生は保護されるべき対象であることが明確に記されています。技能実習制度の本質は、開発途上国への技術移転と人材育成であり、その実現のためには技能実習生の権利保護と適切な環境整備が不可欠です。この基本理念に基づいて、実習実施者、監理団体、そして技能実習生それぞれが責任を果たすことで、真の国際協力が実現できるのです。

制度の歴史と法整備

技能実習にまつわる法整備は以下の流れで行われてきました。

  • 1993年:技能実習制度創設
  • 2010年:在留資格「技能実習」の創設
  • 2017年:技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)施行

技能実習制度は、1960年代から始まった、海外にある現地法人の社員研修として行われていた「研修制度」を前身とします。1990年代になると監理団体による研修生の受入れが始まり、海外に拠点を持たない中小企業も研修生の受入れができるようになりました。研修生は「労働者」として受け入れられたものではないため、労働者を保護する法律の対象外となっており、報酬は月に約6万円程度でした。研修制度は制度としての立て付けが良いとはいえないものだったため、残業や夜勤が禁止されているにも関わらず残業をさせたり、残業をしても残業代を払わないような企業もあったようです。この時代の研修生・技能実習生の労働環境の劣悪さが、今日まで続く「技能実習は奴隷制度」という誤解の原因となりました。

こうした状況の中、2010年に入管法が改正され技能実習制度が成立しました。技能実習制度が成立したことにより技能実習生を保護するための体制も整備され、ルールを破った企業には受入れ停止等の処分が下されるようになりました。

2017年には「外国人技能実習生の適正な実施及び、技能実習生の保護に関する法律」が施行され、現在まで続く、技能実習生の人権を守るための枠組みが確立しました。

技能実習制度の歴史については以下の記事で詳しく解説しています。
関連情報:【今こそ振り返ろう】技能実習制度の歴史

技能実習制度の仕組みと運用

技能実習の段階的構成

技能実習生は以下の流れでキャリアを積んでいきます。

技能実習1号(最長1年間)
基礎的な技能等を修得する段階
入国後講習を含む
技能実習2号(2~3年目)
より実践的な技能等を修得する段階
技能実習2号への移行は、技能検定基礎級等の合格が移行要件
技能実習3号(4~5年目)
熟練した技能等を修得する段階
技能実習3号への移行は、技能検定3級等の合格と一時帰国が必要

技能実習2号に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:関連情報:技能実習2号とは?1号との違いと移行要件を解説

技能検定についての詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:関連情報:技能検定試験とは?試験の目的と対策を解説

受入れ方式の違いによる在留資格の種類

技能実習生の在留資格には、受入れ方式によっても違いがあります。

  • 技能実習(イ):企業単独型(日本企業の海外事業所等からの受入れ)
  • 技能実習(ロ):団体監理型(監理団体を通じて受入れ)

現在、98%以上が団体監理型での受入れとなっています。

技能実習に関わる主な関係者

各関係者の役割

実習実施者(企業)
技能実習を実施し、技能実習生の日常生活面の支援を行う
監理団体
実習実施者の監理・支援、技能実習生の保護を行う非営利団体
送出機関
本国で技能実習生の募集・選定・派遣前講習等を行う機関
外国人技能実習機構(OTIT)
制度の適正な実施を図るための認可法人
出入国在留管理庁・厚生労働省
制度の管理・運営を担う国の機関

監理団体に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:関連情報:監理団体とは?役割と選ぶポイントを解説

技能実習生受入れの流れ

受入れの基本ステップ

監理団体の選定
許可を受けた監理団体を選定し、契約締結
技能実習生の面接・選考
現地面接またはWeb面接での選考
技能実習計画の作成・認定申請
OTITへの計画認定申請
在留資格認定証明書交付申請
出入国在留管理局への申請
入国後講習
日本語、日本の生活一般、技能実習生の法的保護等(1ヶ月以上)
実習先への配属
本格的な技能実習開始

技能実習生の受入れの流れについての詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:【徹底解説】外国人技能実習生受入れの流れ

技能実習生の面接・選考に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:ポイントチェックWeb面接

技能実習生の入国後講習に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:入国後講習とは?わかりやすく解説

企業に求められる体制と義務

必須の選任義務

技能実習生の受入れ企業には、以下の役職者の選任が義務付けられています:

技能実習責任者
技能実習の実施に関する管理責任者(各事業所に1名以上)
技能指導員
技能等の指導を担当する者(技能実習を行う作業に従事した経験等が必要)
生活指導員
生活面の指導・相談等を担当する者

技能実習責任者、実習指導員、生活指導員の選任に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員の選任

講習受講義務

技能実習責任者と生活指導員は、所定の講習を修了する必要があります。技能実習責任者講習は3年ごとの更新が必要です。


技能実習責任者講習に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:技能実習責任者講習とは?

その他の準備事項

その他に準備するものとしては以下のようなものがあります。

  • 適切な実習環境・設備の整備
  • 宿舎等の生活環境の確保
  • 技能実習生への適正な報酬支払い体制

技能実習生の給与に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:技能実習生の給与状況は?相場や給与設定を解説

技能実習の対象職種と人数枠

技能実習の対象職種

技能実習の対象職種は、技能移転の観点から一定の技能水準を要する作業に限定されており、単純労働は対象外です。2025年6月現在、移行対象職種は以下のようになっています。

  • 技能実習2号移行対象職種:91職種168作業
  • 技能実習3号移行対象職種:82職種153作業
  • 主な分野:農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属等

移行対象職種に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:技能実習生受入れ可能職種【職種別詳細情報】

受入れ人数枠

技能実習生の受入れ人数は、企業規模に応じた基本人数枠が設定されており、優良な実習実施者には受入れ枠が増えるなどの優遇措置があります。

基本人数枠
常勤職員数に応じて決定
優良実習実施者
基本人数枠の2倍まで受入れ可能

技能実習生の受入れ人数に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:技能実習生受入れは何人まで?適正な受入れ人数を解説

優良な実習実施者と監理団体

受入れ企業である実習実施者と監理団体のうち、特に技能実習を運用する上で高い水準を満たしていると認定されると、それぞれ優良な実習実施者、一般監理事業とよばれる優良認定をうけることができ、優良認定を受けると様々な優遇措置が受けられます。


優良な実習実施者に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:優良な実習実施者を目指しませんか?

優良な監理団体(一般監理事業)に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:【一般監理事業】優良な監理団体のメリットとは

育成就労制度とは?

技能実習制度には以下のような課題が指摘されてきました。

建前と実態の乖離
国際協力が目的だが、実際は労働力確保として機能
転職の制限
原則として実習先変更ができない仕組み
技能移転の形骸化
不正行為の温床:労働基準法違反等の問題が継続的に発生

これらの課題を受け、政府は制度の抜本的見直しを決定し、育成就労制度への移行が決まりました。

制度移行の概要

技能実習制度の後継制度として、2027年より段階的に施行予定の新制度です。技能実習制度が抱える課題の解決を図り、より実態に即した制度設計となっています。

育成就労制度の基本設計

目的
人材育成に加えて人材確保も明確に位置づけ
特定技能1号への移行を前提とした制度設計
受入れ分野
人手不足が深刻な特定産業分野に限定
現行の技能実習対象職種より絞り込み予定

主な変更点

1. 転職可能性の拡大
一定の条件下で同一分野内での転職が可能
やむを得ない事情があれば異分野への転職も検討
2. 日本語能力要件の設定
入国時に日本語能力試験N4程度以上の語学力を要求
段階的な日本語能力向上が求められる
3. 育成計画の策定義務
体系的な人材育成を図るため、育成計画の策定が必須
技能向上だけでなく、日本語能力向上も計画に含める
4. 管理体制の見直し
監理団体に代わる管理機関の設置予定
より実効性のある監理体制を構築

移行スケジュール

  • 2024年:法律成立
  • 2027年:育成就労制度施行開始
  • 2030年頃:完全移行完了見込み

企業が準備すべきこと

短期的な準備(現在~2027年)
現行技能実習制度下での適正な実習体制の整備
監理団体との密な情報共有・連携強化
中長期的な準備(2027年以降)
日本語教育体制の強化:社内での日本語学習支援体制整備
体系的な人材育成計画の策定:技能と日本語を両立した育成プログラム
管理機関との関係構築:新たな管理体制への対応準備

育成就労に関する詳しい情報は以下の記事で解説しています。
関連情報:新制度「育成就労」とは?制度の内容と技能実習制度との違いを詳しく解説

まとめ

技能実習制度は、2027年以降の育成就労制度への移行を控え、重要な過渡期を迎えています。外国人材の適正な受入れを実現するためには、現行制度の正しい理解と新制度への準備が不可欠です。

現行制度の適正運用
技能実習生の保護と技能向上を第一とした体制整備
新制度への準備
日本語教育・人材育成体制の強化
継続的な情報収集
制度改正に関する最新情報の把握

外国人材の受入れは、企業の成長と国際協力の両立を図る重要な取り組みです。制度を正しく理解し適切な準備を進め、持続可能な外国人材活用を実現していきましょう。

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