5月20日(火)に、「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」の第3回会合が開催されました。ここで提示された育成就労制度・特定技能制度の対象分野について、顧問である杉田弁護士(弁護士法人Global HR Strategy 代表弁護士)の意見をもとに分析し資料にまとめました。
【育成就労制度・特定技能制度】対象分野(案)の分析

1.分野別運用方針策定に向けた検討の開始
今回の会議では、特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針の作成に向けた議論が開始されました。分野別運用方針は、基本方針にのっとり、分野ごとに特定技能制度及び育成就労制度の運用に関する事項を定める重要なものであり、分野ごとに両制度の方針が一体的に作成されることとなっています。今回は、今後の詳細な議論の出発点として、対象分野や業務内容、育成就労制度における育成イメージ、技能評価試験の整備方針などが示されました。
今後の有識者会議では、これらの検討開始段階での議論を踏まえ、以下の重要論点が継続的に議論される予定です。
- ■受入れ対象分野
- ■上乗せ要件(分野の特性に応じて告示等により定めるもの)
- ■分野ごとの転籍制限期間及び制限期間を設定した場合の待遇向上策
- ■受入れ見込み数
どの分野で、どのような技能水準の人材が、どのように育成・評価され、どのような条件で就労するのかといった点が、分野別運用方針によって明確に定められていきます。 今後、令和7年12月の関係閣僚会議決定・閣議決定を目指して、有識者会議と技能評価試験などを検討する専門家会議で議論や意見とりまとめが行われる予定です。
スケジュール

(画像出典:出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針の作成に向けた作業開始について」
特定産業分野の概要【案】
(育成就労産業分野は「鉄道」「航空」を除く17分野が検討中)
分野 | 業務区分 | ||
---|---|---|---|
既存の分野 | 介護 | ·介護 | |
ビルクリーニング | ·ビルクリーニング | ||
建設 | ・土木 ・建築 ・ライフライン・設備 | ||
自動車整備 | ·自動車整備 ※「車体整備」を切り分けることを検討中 | ||
宿泊 | ·宿泊 | ||
自動車運送業 | ・トラック運転者 ・タクシー運転者 ・バス運転者 | ||
農業 | ・耕種農業全般 ・畜産農業全般 | ||
漁業 | ・漁業 ・養殖業 | ||
外食業 | ・外食業 | ||
林業 | ・林業 | ||
木材産業 | ・木材産業 | ||
既存分野のうち、新たな業務区分等の追加を検討中である分野 | 工業製品製造業 | ・機械金属加工 ・電気電子機器組立て ・金属表面処理 ・紙器・段ボール箱製造 ・コンクリート製品製造 ・RPF製造 ・陶磁器製品製造 ・印刷・製本 ・紡織製品製造 ・縫製 ・電線・ケーブル製造(P) ・プレハブ製造(P) ・家具製造(P) ・定形耐火物製造(P) ・不定形耐火物製造(P) ・生コンクリート製造(P) ・ゴム製品製造(P) ・かばん製造(P) | |
航空 | ·空港グランドハンドリング ·航空機整備 | ||
鉄道 | ・軌道整備 ・電気設備整備 ・車両整備 ・車両製造 ・運輸係員 ・駅・車両清掃(P) | ||
飲食料品製造業 | ・飲食料品製造業 ※「水産加工業」を切り分けることを検討中(P) | ||
新たに追加を検討中である分野 | リネンサプライ(P) | ・リネンサプライ(P) | |
物流倉庫(P) | ・物流倉庫(P) | ||
資源循環(P) | ・廃棄物処分業(中間処理)(P) |
注:「P」(マーカー)は新規追加について業所管省庁の要望を踏まえて検討・精査中のもの(会議資料を基にJITCO作成)
2.育成就労制度における「育成イメージ」と「技能評価試験」の詳細(案)
育成就労制度は、修了するまでに、育成就労産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を修得していることが求められ、その修得に向けて、分野別運用方針で定める業務区分の中で「主たる技能」を定めて計画的な育成・評価が行われる必要があります。
今回の会議では、この計画的な育成・評価の対象となる「主たる技能」や必須業務、そしてそれを評価するための試験について、分野ごとの検討案が提示されました。試験については、既存の技能実習評価試験や技能検定の活用、または新規作成試験の実施などが検討されています。各分野について、以下のとおり方向性が示されています。
介護分野 | 技能実習2号移行対象職種と同様の育成・評価を想定し、既存の技能実習評価試験を名称変更して活用することを検討中です。 |
ビルクリーニング分野 | 技能実習2号移行対象職種と同様の育成・評価を基本とし、3年目試験は特定技能1号評価試験を、1年目試験は新たに育成就労評価試験を整備しつつ、当分の間は技能検定を活用することが検討されています。 |
建設分野 | 土木、建築、ライフライン・設備の各業務区分において、既存の技能実習2号移行対象職種(とび、型枠施工など計25職種38作業)の作業単位で「主たる技能」を設定し、既存の技能検定や技能実習評価試験を活用する案に加え、基礎ぐい工事業、電気設備施工、鉄筋継手(圧接)、電気通信、管路更生を新たな「主たる技能」として追加し、育成就労評価試験を新規整備する案が示されています。 |
造船・舶用工業分野 | 造船、舶用機器、舶用電気電子機器の各業務区分に紐づく技能実習2号移行対象職種(溶接、塗装、鉄工等計22職種43作業)について、これらの作業単位で「主たる技能」を設定し、技能検定や既存の技能実習評価試験を活用する案が示されています。 |
自動車整備分野 | 一つの業務区分を「自動車整備」と「車体整備」に切り分け、自動車整備では既存の技能実習評価試験を活用する一方、車体整備については新たに必須業務を設定し、育成就労評価試験を整備する方向で検討が進められています。 |
宿泊分野 | 技能実習2号移行対象職種と同様の育成・評価を基本としつつ、特定技能制度でのみ従事可能となっていた企画・広報業務についても必須業務に追加し、3年目試験は特定技能評価試験を活用、1年目試験は技能実習評価試験の内容を変更して整備する案が示されています。 |
農業分野 | 耕種農業全般、畜産農業全般について新たに各業務区分全般に係る必須業務が設定され、3年目試験は特定技能評価試験を、1年目試験は特定技能評価試験の試験範囲に対応した育成就労評価試験を新たに整備し、既存の技能実習2号移行対象職種作業(施設園芸、畑作・野菜、果樹、養豚、養鶏、酪農)については、作業単位で「主たる技能」として設定し、既存の技能実習評価試験を活用する案が示されています。 |
漁業分野 | 漁業、養殖業の各業務区分について、新たに業務区分全般に係る必須業務が設定され、育成・評価が行われます。3年目試験は特定技能評価試験を、1年目試験は既存の技能実習評価試験を活用して特定技能評価試験の試験範囲に対応したものを新規作成する予定です。 |
外食業分野 | 外食業全般について、新たに外食業全般に係る必須業務が設定され、育成・評価が行われます。1年目試験は育成就労評価試験を新規整備(3年目試験は特定技能評価試験を活用)する案が出ています。また、医療・福祉施設給食製造職種については「主たる技能」として設定し、既存の技能実習評価試験を活用する案が示されています。 |
林業分野 | 既存の技能実習移行対象職種と同様に、技能検定を活用した育成・評価が想定されています。 |
木材産業分野 | 既存の技能実習2号移行対象職種作業(機械製材)に加え、特定技能制度でのみ従事可能となっている業務(合単板製造、集成材製造等)も含めた業務区分全般に係る必須業務を新たに設定し、育成・評価が行われます。3年目試験は特定技能評価試験を、1年目試験は既存の技能実習評価試験を活用して特定技能評価試験の試験範囲に対応したものを新規作成する予定です。 |
詳細は下記のリンクをご参照ください。
国際人材協力機構:育成就労制度に関する省令案等のパブリックコメントの募集が開始されました